日本エネルギー会議

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大胆な発想

 福島第一原発の事故で、当時の首相や発電所長は、「日本が終わると思った」と回顧している。原発のメルトダウンや南海トラフの地震は最高レベルのリスクだと誰もが知っているが、過小評価している大きなリスクが、中東動乱による石油や天然ガスの供給支障だ。
 政府や民間の石油備蓄があるとはいえ、インド洋を日本目指して進むタンカーの列が乱れた瞬間に大パニックが起き、我が国は社会的経済的混乱に陥る。この確率は大震災やテロなどに比べ格段に大きい。火発燃料代は国際収支を悪化させ徐々に国富を損じているが、突発的な化石燃料の供給支障はサドンデスである。
 特に現在では、原発が二基を除いて停止しており、電力の供給は天然ガスや石炭による火力発電に依存するところが大きく、その供給支障は影響が大きいなどというものではない。石油に関しては国、民間で数年分の備蓄がされているが、それだけでは価格の高騰は避けられず、国内の動揺も止まらない。また、天然ガスの備蓄はほとんど行われていない。今日、電化率が上昇しているため、大規模停電によって即、生産活動、日常生活が成り立たなくなる。もし、首都圏で大規模停電ともなれば、その被害は全国に及ぶことになり、「日本が終わってしまう」級の国難が生ずる。
 原発に係る新たな規制基準の適用で、いくつかの原発が廃炉と決まっても、それを直ちに実施に移すのは賢明ではない。廃止する予定の原発をスタンバイエネルギーにするのは大胆な発想に思えるが、もっとも日本のリスク対策にかなったやり方である。
 従来、原発をベースロードにして、バックアップとして火発、中でもとっくに壊してもよい旧式の火発を温存していた。こうすることで燃料費を使わずにバックアップをすることが出来たが、今度は原発をバックアップと位置づけることで、使用済燃料という将来処理処分に金の係るものを必要以上に溜め込まなくても済むようになる。さらに動かさなければ燃料の減損もない。地元の心配に対しても、運転時間が減ることにより、大事故のリスクはそれだけ確実に減ると説明が出来る。合理的な廃炉の方法を研究開発する時間的な余裕も出来る。
 問題はそのための費用であるが、中身は償却費であり管理費人件費である。だが、大半の原発は既に運転開始からかなりの年月が経っており、償却もある程度は進んでいる。スタンバイということになれば、償却も進めることが出来る。もちろん消費者には電気料金か税金で負担してもらうことになるが、これが消費者や国民の負担を一番少なく出来る方策であると考える。
 国際収支を悪化させている火力の燃料費については、購入先の多様化による価格の引き下げとともに、旧式火力を高効率の火力に早急に置き換えていくことで燃料一単位当たりの発電量を増やすことでカバーしていくことが必要だ。原発をスタンバイにすることで、今までのように原発の存在が、化石燃料の価格上昇を一定程度抑制する働きも期待出来る。
 突発的な石油や天然ガスの供給支障によって、日本の社会経済は瞬間どうなるのか、被害想定のシミュレーションを急ぐべきである。その結果が明らかになれば、原発をスタンバイさせる、輸送手段のハイブリッド化、産業や住宅の電化を急ぐことなど、あらゆる対策を真剣に考えるようになる。アベノミクスの二本目、三本目の矢として、突然のエネルギー供給支障に対する対策を今やることが、「美しい国」を安倍総理の時代で突然終わりしないために必要なことである。

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