日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

立地に合わせた防災を

 国の要請で原発が立地している各自治体は、新基準のもとに防災計画を策定中であるが、人口が多い自治体の中には策定は極めて困難と表明しているところもある。大間も含め日本の全原発サイトを訪れた私の経験からすると、敷地の広さ、地形、周辺の人口、道路事情、港湾事情など、どれ一つとして同じ条件と見なされるものはない。一般的に原発は炉型や基数、運転年数などで区分されるが、防災計画から考えると背後に山が迫っている海岸の場合と、周辺に平坦な土地が広がっている場合(柏崎刈羽、大間、東通、福島、東海、浜岡)の二つに大別することが考えられる。
 防災計画を策定する場合、特に苦労するのは前者である。海があるので、原発周囲は半分しか陸がない。それなのに、すぐ後ろに山が障害物になっている。放射能が飛んだ場合は、この山で遠くに飛散するのを防いでくれるが、逆に考えれば原発周辺に放射能が集中して落ちる可能性があるということだ。切通のような狭い道、あるいはトンネルで他の地域とつながっている。これらの道は普段から地震や大雨で通行止めとなる可能性が高い。命綱の送電鉄塔も急峻な山地に建っている。地震や津波で海岸線に沿った道路は破壊される可能性が高い。これでは、住民の避難や事故対応の人員の輸送が困難である。迂回路がなければ渋滞して動きが取れなくなる。原発は海から見ると天然の要塞に囲まれているようだが、ヘリコプターによる空から、舟艇による海からのアプローチに対しても容易ではない。津波ともなれば海上自衛隊でも躊躇するだろう。
 すでに準備はしているとはいえ、本番になれば多くの人員と莫大な資材を現場に送り込まなければならないが、ガソリンも含め、そのロジスティクは確保出来るのか。大飯原発では電源車を山の斜面の道路に配置するなど苦労しているが、本当にスペースの確保が難しいのだ。そのことは、原発の建設にあたったメーカーやゼネコンなら痛いほどわかっているはず。福島第一原発の航空映像で一面の汚染水貯蔵タンクや廃棄物置場が映るが、山に囲まれた原発ではあんなスペースはどこを探しても見当たらない。
 福島第一原発の事故の際は、副大臣が現地入りするのに、ヘリコプターの着陸地点がなく、やむなく山中の自衛隊レーダー基地に降り、そこからジープで山道をたどって大熊町のオフサイトセンターに到着した。まず、人員にせよ、物資にせよ、第一に複数のヘリポートの整備が必要である。次に最低限のスペースを確保するために、周囲の山にトンネルを掘って地下壕のようなものを作る必要がある。
 原発の多くが国定公園など風光明媚な場所にあり、山を切り崩すわけにはいかない。敦賀原発では、低レベル放射性廃棄物の入ったドラム缶や鉄箱を保管するために、原発の背後の山を掘って貯蔵庫を建設し、終了後再び土盛と植樹をしてもとの山の稜線を回復することが行われている。これに見習った工事をする以外にないだろう。あるいは増設用に造成した敷地がある場合には、これを既設炉の緊急対応用に当てることも考えられる。
 想定事故の規模や内容によって必要となるスペースを算出して、これを確保するといったオーソドックスなやり方で検討が行われているのだろうか。従来、防災計画や防災訓練が現実離れした簡単なものだった理由は、こうした検討を始めれば、すぐに行き詰まるからではなかったのか。事業者だけでなく、原子力規制委員会や各立地県の本気度が試されている。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康