日本エネルギー会議

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被ばく量の自己管理

 6月29日付の朝日新聞一面トップ記事の見出しは「被曝量、自己管理を提案」だった。内容は、政府が田村市で開いた除染後の住民説明会で、年1ミリシーベルトの除染目標を達成出来なくても、一人ひとりが線量計を身につけ、実際に浴びる「個人線量」が、年1ミリシーベルト」を超えないように自己管理することを提案したというもの。説明した内閣府職員の「その気なら、僕が線量計を増産してもらう(メーカーに?)」というおかしな発言も報じられていた。これが一面トップニュースかどうかはわからないが、スクープであることは確かだ。
 私がエッセイNO.289 「除染に関する政策転換」で書いたように、達成不可能で予算の無駄である1ミリシーベルト目標を止めて、個人被ばく線量管理をきっちりとすべきだということを政府もようやく表明したようだ。だが、依然として個人被ばく線量管理体制の改善は見られず、一時帰宅の際に渡される線量記録用紙に、「このデータは福島県が実施する県民健康管理調査に使用する場合かあります」という文言が書き加えられただけで、個人管理が出来るベースが出来上がったわけでもない。
 政治家のウケ狙いと役人の責任逃れによって、除染目標年1ミリシーベルトが強調されたにもかかわらず、環境省が再除染を事実上拒否しているため、いまだに混乱が続いている。政府も住民説明会でアイデアとして提案するのではなく、今後は個人管理で行くという正式な発表を行うべきだ。そうでなくては、記者に「なし崩しで帰還の流れ」と書かれても仕方がない。
 住民は、「年1ミリシーベルトと言ったのは政府だろう」と反発を強めている。前言取り消しをして責任を取らされるのは嫌だという政治家や役人の心理、どんな不合理なことでも「一度約束したのだから、その通りやれ」とがんばる住民。こじれてしまって、まるで意地の張り合いだ。
 原発の安全神話の時も「今まで安全だと言い続けてきたのだから、いまさら改良しますとは口が裂けても言えない」「今まで自分たちを騙してきたのか」とがんばり続けた結果、福島第一原発の事故になってしまった。今回は、除染費用の垂れ流しと杜撰な被ばく管理、そして復旧や帰還の遅れという結果になりつつある。
 日本という社会は、この問題に限らず、メンツのために時間と金をどれほど使い、そのくせ実態が改善されることのないことをどれほど繰り返してきたのか。もう、こんなことをやっていられるほど、国力に余裕があるとは思えないが、国も企業も潰れてみるまではわからないのだろう。

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