日本エネルギー会議

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集中の功罪

 福島第一原発の事故では、太平洋沿岸に並べて設置された6基の原発で次々とメルトダウンの危険性が迫り、水素爆発がとなりの原発に影響するなど対応するスタッフは混乱に陥った。3台の非常用発電機は津波で一瞬にして全部が使えなくなった。1000本を超す使用済燃料の入ったプールの冷却には事故後もずっと悩まされた。集中させていれば、それなりに対策もしっかり打っておかなければ、事故の際には痛い目に遭うというのが、得られた教訓の一つだ。
 従来、原発開発の歴史において、いかに出力を大きくするか、いかに設備をコンパクトにするかが常に課題であった。一つのサイトに小出力の原発を数多く設置するアイデアもあったが、趨勢は大型化であった。使用済燃料が増えたことに対して、プール内の燃料架台を稠密化し、より多くの使用済燃料を収容出来るような改造も行われた。
 かつて一つのサイトに原発を何基設置すれば運用上、一番効率的かを検討したことがある。その結果は4~5基であったと記憶している。1基や2基では定期検査も少なく、地元に対する経済効果も年間を通じたものにならない。メーカーや工事会社にしてもスタッフをサイトに常駐させておくのが苦しくなる。
 原発の職員の数も発電コストに影響するため、原発一基当たりの現地の職員数や本社も含めた技術職の人数のサイト毎の比較をしたこともある。生産手段などが集中するのは、建設や運転において効率が良く、経済性が高いからだ。  
 グローバル化した今日、世界的な競争に勝つためには、生産手段だけでなく流通も、消費も集中が一つのキーワードとなっている。人口も都市に集中し、大きな組織では権限も集中する。集中は必ずしも悪いことだとは言えないが、一方でやりすぎれば、天災や事故の時に被害や危険性が大きくなりすぎ、手がつけられなくなるという落とし穴がある。猛毒は集中管理をおいたほうが良いと考えがちだが、盗まれることを前提にすると一度に大量に盗まれれば大変なことになる。集中によるメリットだけに満足するのではなく、集中したことによるリスクの増大に対して、十分な金と手間を掛けておく必要がある。
 タンカーなどの設計にあたって船倉を隔壁で分けるなど、座礁事故の教訓が生かされているケースもあるが、一般的に施設や危険物を集中させることのリスクへの意識はまだまだ低い。狭い国土に大きな人口を抱えている我が国にとって、大きな設備や危険のポテンシャルを持つものを集中させることについて、どのように対策をしていくかの検討は急務であり、福島第一原発の事故をきっかけに、この分野の研究が盛んになることが望まれる。

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