日本エネルギー会議

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バランスのとれた判断を

 原発推進か否か。世論は分かれている。産業界は概ね推進に好意的だが、メディアも珍しく分かれている。この問題をどのような観点から論ずればよいのかをまず考えなくてはならない。
 資源小国としてのエネルギー安全保障の観点、貿易収支の観点、国際競争力の観点、地球温暖化対策の観点、自然災害にどう対処するかの観点、放射性廃棄物処理処分の観点、核管理の観点、テロ対策の観点、原発立地地域の財政や雇用の観点、世代間の負担公平化の観点、巨大科学技術をどのように管理するかの観点、人々の安心感をどのように得るかの観点などさまざまな観点があるが、日本として平和を維持し、国民生活を守っていくために、最適な選択はどのようなものかということではないか。その一つとして原発の利用をどうするかである。
 選択するにあたっては理想を持つとともに、現実を直視する必要がある。車の運転のように直前の状態に注意を払いつつ、遠くも視野に入れておく必要がある。時間的にも短期だけでなく中長期にも配慮すべきである。国内の都市と地方との両方を考えるとともに、隣国や世界の国々とも協調していく必要がある。原発利用をどうするかは、関連する事柄が多彩で、その判断にはバランス感覚が必要だ。何かの観点にあまりに力点を入れてしまえば、他の観点を犠牲にしたり、破綻してしまう可能性が強い。
 昭和30年代、エネルギー問題に関心の深かった政治家や財界人は原発利用を推進することを選択し、これを実行に移していった。選択に当たっては、当時の国内情勢、世界情勢、エネルギー需給見通し、科学技術の見通しなどを見たはずである。その後、その状況は大きく変化したが、基本的な原発利用拡大の方向はそのままだった。放射性廃棄物の処理処分や核燃料サイクルなど当初思っていたように行かないものもあったが、大目標である準国産エネルギーの獲得はおおむね達成しつつあった。大事故を乗り越えて、世界の趨勢も原子力利用拡大に向かっていた。
 国は原子力開発の閉塞感を打破するべく原子力立国計画を作り、既存炉のゆるやかなリプレースと原発の輸出、サイクルなど諸課題の積極的解決、地球温暖化問題に対する貢献を目指していた。政権交代後、思いがけず大津波で古い設計と管理の不備を突かれ、福島第一原発の事故が起き、ほとんどの原発が停止した状態で約3年間を過ごすことになった。原子力立国計画には原発を取り巻くさまざまな状況が捉えられていたが、どのような観点が不足していたのか、バランスの取れた判断をするためには、今一度これを読み直してみることもひとつの方法である。

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