日本エネルギー会議

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うやむやで良いのか

 5月15日、帰還困難区域にある我が家へ一時帰宅。滞在時間は4時間半だった。富岡町南端の中継基地では、4月16日の際のやる気のない対応ではなく、3月までの通常の対応に戻っていた。国道から福島第二原発の脇の中継基地に向かうと10メートルおきに車の誘導員がいる、いささかオーバーな体制も復活していた。前回の係員が二人きりで、線量計も貸出しない、帰りのスクリーニングも任意といった、いいかげんさを指摘した効果があったようだ。
 このことについて中継基地(内閣府管轄)のE氏から翌日電話があり、4月にはこの体制を一時解除し、事業者が立ち入るだけの体制に縮小したために、何日間かは町から住民へ指示した内容との齟齬が生じたのであり申し訳なかったと謝罪された。昨年の7月の第一回一時立ち入りから今回まで8回の被ばく記録も併せて教えてくれた。しかし、4月16日の記録はついに出てこなかった。
 福島県のホームページには、「被ばく管理は個人が自主的に行う」となっており、同時に「県立医大がデータベースを構築する」と矛盾したことが書いてある。参考までにと断って、E氏に、「どうも各省庁がバラバラにやっていて、誰がどのように全体を管理しているのかわからないのですが」と聞いたところ、内閣府、厚生労働省、文部科学省、原子力規制委員会、市町村、県(実質は県立医科大学に委託)、がばらばらに少しづつ管理しており、各所からあるいは個人からデータを吸い上げてトータルで被ばく線量を管理しているところはどこもないことが判明した。
 事故から3ヶ月間の被ばく線量を行動記録から評価するアンケート調査が、事故から2年を経過した現在、いまだに回収率3割に届かないでいる。その結果、事故直後の被ばくについてさえ、データベースと呼べるようなものが存在しない。
 住民の自主管理とは言うが、ガイドも示されていないので、実質的には何も行われていないのが現状だ。私の知っている限り、避難している住民で、自分の被ばく線量を自主的に管理している人はいない。多くの市町村で線量計を配布したが、その結果を集めるようなことは行われていない。手帳の配布なども市町村でばらばらである。いまだに県はそれを統一しようという気はないようだ。内閣府が中継基地で記録した先ほどの一時立ち入りの際の被ばくの個人ごとの記録も、当面は廃棄しないというだけで、保管年数も取り扱いも決まっていないという。
 「どこかがイニシアティブを取って全体の管理をすべきではないか」と質問すると、「事故による住民の被ばくは想定しておらず、今でも何をやるにも根拠となる法律がない。イニシアティブを取るところとして、あえて言うなら内閣官房あたりではないか」とのE氏の返事であった。原子力規制委員会も防災計画についてヨウ素剤の服用などについては検討しているようだが、緊急時に住民の被ばく管理をどのようにするかについてはまだガイドラインも示していない。委員会は住民の被ばく管理は所掌にあらずと考えているのだろうか。
 今回の避難住民の被ばく管理の実態は、我が国の役所の縦割りの悪さが現れている。このような状態が続けば、のちのちの調査分析などは不可能となり、住民の訴訟などに耐えられるのかもわからない。原発の現場で個人管理が中央登録制度の下、どのように行われているかを経験した人には、今回の住民による自主管理は、どうにも納得のいかないことが多すぎる。取るに足らない被ばく量だとわかったので興味を失ったのか、メディアもこのことについては、ほとんど関心を見せないのも不思議なことだ。
 ひょっとすると、国は区域解除や区域再編をしたので、避難住民の被ばくなど、もう管理しなくてよいと考えている可能性もある。確かに、今やっているようなことに、これ以上税金をつぎ込むのは、止めたほうが賢明なのかもしれない。
 避難した十数万人の被ばく実態についてうやむやになり、データベースも構築されないのであれば、日本は本当に先進国かと外国から言われかねない。もう、そうなりつつある。

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