日本エネルギー会議

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翼の復活

 リチウムイオンバッテリーの火災事故で運行停止していたボーイング787の運航が再開される。アメリカ国家運輸安全委員会の公聴会で、ボーイング社はバッテリーの仕切りに不燃性のテープを入れ、火が出た場合でも他に延焼しないように、バッテリーボックスの下に排気口を作る改良を加えたと説明。これが認められて、事故原因は特定出来ないままに運行再開が決まった。本家本元がそう決めたので、日本でも来月一日から運行再開することになったが、NHKの「クローズアップ現代」など、日本のメディアでは懐疑的な論調が目立つ。
 原発の事故トラブルの対処に関しても、日米で大いに違いがあったことは、関係者の間では周知の事実だ。原発の稼働率において、日本は近年アメリカに差をつけられていた。その理由の一つは事故トラブル後の停止期間の長さであった。アメリカでは事故トラブルがあっても、問題の部品を取り替えてしまえば運転させてもらえる。日本の規制当局や地元自治体は、電力会社に対して原因を説明させ、それに納得がいった後に初めて対策に移ることを認めるという差があった。
 日本では規制当局は事故の再現性を重視し、場合によってはモックアップ装置などにより事故原因を確認することまで求めた。それをしなければ、対策のヒヤリングをしてもらえない。運転再開を望む電力会社とメーカーは、出来るだけ早く事故原因を特定しなくてはならないという苦しい立場に追い込まれていた。
 対照的に、アメリカの電力会社は部品を取り替えてさっさと運転再開し、原因追求はゆっくりと行っていた。このため、日本では原発の事故トラブルによる停止期間がアメリカの4倍にも達していた。実際、再現が難しい場合や原因の特定が難しい場合は、どのようにしてつじつまの合うストーリーを作れるかの知恵比べの感があった。
 もうひとつ、ヒューマンエラーが絡む事故トラブルの場合、アメリカでは正直に言えば免責となるが、日本では後で責任を追求されたり、罰を受けたりする可能性があるため、関係者が口を開かない傾向がある。これも原因特定、対策立案を進めるのに障害となっている。
 日本から見るとアメリカ流は経済優先と思えてしまう。「原因も特定出来ないのに運転再開はおかしい」と考えるのが日本社会である。そういいながらも、日本の関係者は原因を特定するために時間的プレッシャーと戦うことで、真実とは別に原因をつくりだしてしまう可能性がある。
 果たして日米、どちらが安全かはわからない。日本は形式的だと言えるし、アメリカは実利的だと言える。日米、それぞれの社会が求めることに応えようとするから、そのようなことになるのかもしれないが、いずれもその弱点に注意する必要がある。日本が欧米から科学技術を取り入れて百年以上経つが、いまだに不器用な使い手に見えるのは、長く続いた美と心を求める伝統がそれだけ強いのかもしれない。

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