日本エネルギー会議

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教育改革の中身

 福島第一原発の事故によって電力会社や原子炉メーカー、工事会社の原子力教育はどのように変わるべきか。それを考えるには過去にやっていた教育の中身を反省する必要があり、その手がかりとして福島第一原発の事故の原因や対応をよく調べることで、今までの教育の何が問題だったかを明らかにすることが出来る。その例をあげよう。
 事故原因の方からたどれば、原子力の怖さについての教育が不足していた。いったん電源や水源を失えば、原子炉はメルトダウンに突き進む。圧力の高くなった炉内には冷却水を注入することが難しくなる。ベントや格納容器の気密性破壊により外部環境に出た放射能は住民に襲いかかる。水素や水蒸気が爆発すれば対応そのものが困難に陥る。電源や水源を失わせる要因は自然界に多く存在し、それらが複合的に発生することもあれば、人為的なミスやテロと絡んでくることもある。これらは普段見えないものであるが、注意深く世界中の例を観察し最新の知見を集めて発生した場合に、重大な結果をもたらすものから重点的に、いわゆるリスクの大きさにしたがってその事実を教育するべきであり、残余のリスクに対する備えの重要性についても教育内容を改めておくことで、常に緊張感を失わないようにしなくてはならない。
マネージメント教育においては、組織の怖さについての教育が不足していた。組織が仕事の効率を上げる側面だけでなく、必要なことを必要なスピードで必要な規模で出来ないようにする側面も持つことを知らねばならない。執行部が組織に対する内外の大切な規制、監査、検査などを、骨抜きにしてしまう傾向があることもわかっている必要がある。なによりも内部で危険に気づいた者が声を上げなくてはいけないことを教える必要がある。
 事故への対応の面からたどれば、絵に書いた餅、畳の上の水練では全く役に立たないことがわかったのであり、より実践的な内容にすることが必要で、この点は周辺住民を守るためにも、どんな妥協もあってはならない。運転員や保修員などの他、事故時の支援にあたる本社スタッフに対しても、実践的な教育訓練を施しておく必要がある。社員に対する教育訓練は通り一遍のものではなく、十分に深く広いものに改め、何年に一度ではなく年中行われている必要がある。外注に依存しすぎていた業務は直営に戻し、外注する業務についても、少なくとも緊急時には社員も戦力となるだけの技量を維持するようにすべきである。
 いまだ事故の事象や原因が特定出来ないところもあるが、二年も経つと資料の散逸が急速に進むので、東京電力だけでなく、原子力業界としても福島第一原発の事故に関する記録を早急に集めて次世代の教育資料として使えるようにしておく必要がある。
 事故の原因や背景をつくった責任、うまく対応できなかった責任は事故発生までのことであり、事故後は地域の復興や賠償、それに得られた教訓を次世代に伝える責任が当事者にはある。

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