日本エネルギー会議

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保険の機能

 福島第一原発の事故後、原子力損害賠償保険の見直しが話題になっている。保険は、原子力損害賠償責任保険(民間保険契約)と原子力賠償補償契約(政府補償契約)の二本立てとなっているが、今回の地震・津波事故に関しては、政府補償契約での支払いになる。政府補償契約の上限は現在1200億円で、これを超える分に関しては、異常に巨大な天災地変の場合、政府の援助が出来ると云う例外措置がある。原子力委員会の試算では、実際の被害額は5兆円5千億円と見られ、設定された1200億円という保険金額では「焼け石に水」ではないかとの指摘もある。
 原子力損害賠償責任保険(民間保険契約)の年間保険料は、原発1基当たり平均5700万円。単純に50基を掛ければ、原子力保険プール(1社ではリスクを引き受けられないため日本の損害保険会社が束になって対応している)の保険料収入は、年間28億5000万円と推定される。
損保ジャパンの「ほけんの学校」によれば、火災保険誕生のきっかけは1666年のロンドン大火。その当時から木造とレンガ造りでは保険料が2倍の差がつけられていた。江戸初期の南蛮貿易で使われた御朱印船の「拠金(なげかね)」という貸付金は一種の保険であったが、その利率は日本人や中国人の場合に比べポルトガル人は低かった。今日、自動車保険はゴールド免許割引があり、事故を起こして保険金の支払いを受ければ、自動的に次回の保険料率が上がる仕組みになっている。
 原子力損害賠償責任保険については、そのようなことは聞いたことがない。保険には万一に備えてリスクを分散することの役割のほかに、事故を起こさないように努力すれば、経済的に報われるという事故防止機能がある。どの原発も原子力規制委員会が示す安全規制基準をクリアーすることはもちろんだが、その上で保険業界が事故の実績や安全管理に対する評価を行なって、個別に保険料率を決めるのが筋ではないか。事故を起こした福島第一原発は、まだ収束作業中なので保険に入っておく必要があるが、引き受け手が見つからず1200億円を供託している。これも通常の原発と同額でよいかは疑問だ。
 保険会社が個別の評価をすることで、電力会社に事故防止や被害拡大防止に対するインセンティブを与えることは可能だ。それをやらないのは、その結果を公表すれば地元が騒ぐので困るとか、保険会社に原発のリスクを個別に評価するだけの能力がないとか、仮に莫大な保険料となった場合に原発の経済性が失われるといった心配があるのだろうか。

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