日本エネルギー会議

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土地にまつわる話

 財物の賠償がスタートし、福島原発事故の賠償問題は山場を迎えている。個人にとって最大の財産は、宅地や家などの不動産だ。帰還困難区域に家があった場合、既に避難先で家を新築したり中古の家を購入したりした人もいるが、多くの人はこれから不動産の賠償で得た金で、新たな家を求めるつもりだ。もちろん、何年か後には自宅に帰還し、賠償金はしっかり老後の資金にしようとする人もいる。今回、東京電力は、賠償はするが所有権は東京電力に移転しないと発表している。
 ここまで財物の賠償の開始が遅れた理由には、地方の不動産所有に掛かる特有の問題の存在がある。地方では先祖伝来の土地家屋が多く、それらは登記上、現在の世帯主でない場合があり、既に登記上の所有者が亡くなっていることもある。そのため賠償の前に、遺産相続の問題を片付けなくてはならなくなる。面積にしても登記上の面積が必ずしも正しくはない。宅地でないところに家が建っていることさえある。
不動産の賠償は宅地の固定資産税の評価額や事故当時の新築単価などに係数を掛ける方式が主流となる。東京電力は最終段階で、この係数を2割程度アップさせた。これは地方においては自治体の行った固定資産評価が、都会に比べて一般的に低く、その評価額をもとに賠償を行うと、家を買うには金額が十分なものではなくなるという問題があったからだ。自治体は住民の固定資産税負担を軽減していたが、その軽減策がいざ賠償となった場合あだとなった。
 宅地は固定資産税評価額が一律適用されるため、人によって運、不運が生じている。例えば、Aさんは宅地を親から引き継ぎ、Bさんは農地を宅地に転用し造成し、Cさんは不動産会社から分譲地を買ったとする。富岡町にある私の家の辺りの相場で言えば、取得費用はAさんは実質タダ、Bさんは坪3万円程度、Cさんは坪5万円程度支払ったはず。それぞれかけた費用は違うが、賠償は自治体が個別の事情を考えずに評価した固定資産税評価額×1.43で一律に行われるので、特にCさんは納得がいかない。
 今回、建物については、建てた年度により係数を変えて経年劣化を反映出来るようにしているが、30年も経った建物が多く、まともに計算をするとほとんど価値がないことになるため、古い建物ほど係数を大きくして最低でも200~300万円程度は賠償されるようになっている。貰う側では、これでは家の新築はおろか修理代にもならないと不満を持っているが、新築したばかりで避難した人は、古くなるほど有利なのは、おかしいと言っている。
東京電力は賠償後も所有権をそのままにするとしているが、町に戻らず避難先などで新たな生活をスタートさせる人は、所有していた不動産の売却が出来る可能性は少なく、管理や税金の負担がその後も継続することにも悩んでいる。避難住民たちの間では、土地や家にまつわる賠償の話が尽きない。

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