日本エネルギー会議

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住民は感じていた

 今、福島第一原発では次々とトラブルが発生し、原子力規制委員会の田中委員長は10日の定例会合で、「深刻な事態だ」と述べ、福島第一原発の監視体制を強化するとともにリスクを徹底的に洗い出し、対策を取らせるよう東京電力に求める考えを示した。事故後の福島第一原発の安全維持を、当面仮設でしのごうとした東京電力の誤った考え方を、原子力規制委員会を始め関係者の誰もが見落としていた。
 野田元総理ではないが、事故後「近いうちに」実施すべきだった本格的な設備への切り替えが、ずるずると二年も経過してしまい、綻びが一気に表面化している。メディアも現場作業の困難さや先行きの人材確保の問題には触れたが、仮設の危険性を突いた報道がほとんどなかった。福島第一原発の事故で、原発の恐ろしさがわかったと多くの関係者が言ったが、事故後何をどのようにやるべきかにつながらなかった。
 かつて私が社員教育に携わっていた時、外部から呼んだ講師が、「問題を他人のせいにしないで、自分の問題として捉えることが大切」と指導していたことを思い出す。東京電力を監視している経済産業省、原子力規制委員会、原子力規制庁、福島県のコメントを聞いていると、トラブルを自分の問題として捉えているのかという疑問が湧いてくる。
 ネズミが起こした停電や汚染水の漏洩などを、単なる末端の管理ミスと捉えてはいけない。その原因だけでなく背景もよく調べる必要があり、そこから見えてくる東京電力の組織としての体質こそが直すべきことであるはずだ。
 東京電力では各部門の社員たちが、経営が掲げた目標を達成しようと計画にしたがって黙々と業務を進める。業務の実施は外注先に委ね、計画そのものは疑うこともなく、自らの責任範囲にこだわるが、全体を見る人は数少ない。末端の下請業者に至る巨大な官僚機構の下で、現場の情報や担当者が抱いた疑問は、途中の段階で止まってしまい上には届かない。下からの情報が不十分なまま、決められた予算の変更は困難で、合理化は一律何パーセントカットで通達されてくる。無理は現場担当者や下請けに押し付けられる一方、無駄も多い。
 避難した地元の住民は、東京の関係者と違い、直感的に事故後の状況に対して不安を覚えていた。住民の半分近くは仕事上、福島原発と何らかの関係を持ち、そうでない住民も家族や友人がサイト内で働いていた。彼らが、ずっと以前から東京電力の事故処理に強い不安を感じていた理由は、事故そのものによ東京電力への不信感もあるが、何十年という長い間、東京電力の仕事ぶりを巨大組織の末端から身近に見ていたためでもあろう

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