日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

ネズミの仕業

 福島第一原発で3月18日夜、停電があり各号機の使用済燃料燃料プールの冷却システムや汚染水から放射能を除去する装置が停止した。21日までにはすべて復旧したが、この事故は福島県内で大きな反響を呼んだ。ネズミの死体が見つかったことから、東京電力は停電の原因はトラックの荷台に載せられた仮設電源盤にネズミが入り込みショートしたことが発端であると発表したが、福島第一原発の事故後二年も経つのに、まだこんな簡易な仮設電源で冷却を支えていたのかと驚く人が多かった。事故の連絡通報に時間的な遅れがあったことも県民の怒りをかっている。東京電力福島復興本社の石崎代表の「また一つ信頼を失った」はまったくその通りだ。
 問題はいくつかあるが、不適切な設計施工と、それを長期間直さずに放置したという点ではレベル7の福島第一原発の事故と同じだ。この電源盤の設置に当たっては、東京電力から工事会社に発注がされ、その仕様書に基づいて材料が調達され現場で組立、接続されたはずだ。その後、2年近くこの分電盤は存在し、点検や安全パトロールを受けてきたが、誰もその問題点に気づかなかった。トラブルを起こせば重大なことにつながる所を重点的に押さえるというリスク管理が出来ていなかったことも原発事故と同様だ。
 東京電力の電気部門の担当者は、仕様書をどの程度まで自分で考えたのかはわからないが、外部に設置する分電盤としては動物などが入らないようにガードするのが常識で、監理員としての能力が疑問だ。燃料プールの冷却に関わる重要電源であることの認識はあったのか。工事前の打ち合わせはどの程度行われていたのか。監理員だけでなく、上司もチェックが足りなかったのではないか。請け負った工事会社もプロであれば、そのくらいのセンスは持ち合わせているべきだ。車載されていたということなら、どこかで使っていたものをそのまま運びこんでしまったのかもしれない。設置後の点検や安全パトロールはだれがやっていたのか。仕事の仕組みや進め方を徹底的に改める必要がある。収束作業や炉や燃料の安全維持がこの程度の管理レベルで行われているとすれば、原子力規制委員会は、いったん工事を中断させて総点検を命じても良いのではないか。たしか、委員長は燃料プールから出来るだけ早く燃料を出すように指示したはずである。以前から指摘しているが、原子力規制委員会には現場的センスが少し足りないのではないかと心配だ。
 停電や冷却システム停止の通報連絡の遅さも問題だ。燃料プールの温度が限界に達するにはまだ数日あると思ったのだろうが、それは甘い。福島県民は福島第一原発の事故以来、大きな地震や暴風雨があるたびに、原発が再び危機になり、再度避難しなくてはならなくなるのではと怯え続けている。これは福島県民だけの独特の感覚であり、他県の人にはわからない。国や東京電力の関係者はこのことを再度認識すべきだが、その鈍感さは残念なことに福島県庁幹部にも感じられる。安倍総理が「世界最高水準の安全な原発を目指す」と言っているが、まず福島県民をこれ以上心配させることのないようにするべきだ。「大山鳴動してネズミ一匹」ということわざを思い出したが、「ネズミ一匹で大山鳴動」しないよう願いたい。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康