日本エネルギー会議

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映像の力

 福島第一原発が、津波に襲われ、原子炉建屋やタービン建屋の周囲、それに開閉所までもが、大量の海水に浸かった一枚の写真がある。原発を知る技術者がこれを見れば、誰もが原子炉内の核燃料がメルトダウンするに至る過酷事故を容易に想像出来る。しかし、実際には、千年に一度の大津波の可能性を警告された東京電力の幹部は、福島第一原発に対して直ちに措置をしなかった。その理由のひとつに、そのようなイメージが直ぐに思い浮かばなかったことがあるのではないか。イメージさえ持てれば、例え千年に一度であっても、起きた場合の結果の重大さがすぐに分かり、なんらかの措置を取ろうとしたはずだ。
 我々が、SF映画を見て楽しめるのは、その状況が仮想のものであっても、映像によって頭の中に矛盾のないイメージを作り出せるからだ。現代はCGによって、どのような状況をも作り出して、リアルな擬似体験が出来るようになっている。何百字を費やして説明を書くより、簡単な図解の方が一瞬にしてすべてを伝えることが出来る。さらに映像ともなれば伝えられる情報量は、文字や図に比較して桁違いだ。昔は現場で安全パトロールの指摘を用紙に書いていたが、最近では問題の箇所の状況をデジタルカメラで撮影してプリントアウトして貼り付け、そこに何が問題かを書き込むようなことが行われている。これも映像による「一目瞭然」を狙ったものだ。
 映像であれば、背景や周囲の状況が一度に示され、それらの関係性が明確に把握出来る。文章や図であれば、一部分しかクローズアップしないので、対象と周囲の状況の関係性を頭の中で組み立てなくてはならず、どうしても狭い範囲の検討や、対象物に焦点を絞った検討になってしまう。映像は人に全体を瞬時に把握させる力を持っている。
 最近では、自治体やテレビ局で、洪水や火山の噴火に伴う溶岩流などの自然災害について、ハザードマップをつくるだけでなく、CGを駆使して災害がどのように起こり、どのように展開するかを立体的に示すことが流行っている。スーパーコンピュータを使えば、短時間でさらに緻密な絵を描けるだろう。時間的経過で状況がどのように変化していくかがわかることは、どの時点でどのような対応が必要かを考える上で大切なことである。
 福島第一原発の事故の反省から、規制当局や電力会社で原発の過酷事故や住民の避難についての検討が活発化すると思われる。関係者に明確なメッセージとなり、速やかな行動を促す映像の力を、フルに活用するやり方が取り入れられることを期待したい。

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