日本エネルギー会議

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二つの安全

 通常、安全管理活動というのは事故が発生しないようにすることだと考えている。しかし、事故が発生した際、発生しそうになったときにすぐに対処し、大きな被害が出ないようにするのも立派な安全管理活動である。例えば、墜落災害を防止するには二つの方法がある。一つは足場や手すりなどをしっかり作っておくこと。もう一つは安全帯などを着けることで、万一墜落しそうになっても地上まで落下しないようにすることだ。下に安全ネットを張ることも現場ではよく行われる。
 福島第一原発の事故を検証すると、規制当局も東京電力も、この二つの方法を現場の感覚で理解していなかったのではないかと思ってしまう。原発事故が起きないようにすることに気が取られ過ぎ、原発に本来備わっている安全系の設備がどのように作動するかを上手く説明するなど、机上の検討に終始していたように思われる。
 対外的には格好の悪いことであり、反対派やメディアから叩かれる可能性もあるが、原発事故が発生してしまっても、小規模な被害にくい止めることが出来るような準備をしておくべきであった。その意味では日本原燃が2004年に発表した事例集「再処理工場のウラン試験時に発生が予想されるトラブル等とその対応について」とそれに続く「再処理工場のアクティブ試験時に発生が予想されるトラブル等とその対応について」は、外部に大きな影響を及ぼさない規模の事故事例ではあるが、事故は起こり得るとしたもので、我が国では画期的なものであった。
 スリーマイル島での軽水炉の事故が発生した際、我が国の原子力業界は、給水ポンプ停止の原因、蒸気逃し安全弁の固着、操作盤につけられていた保修のための札や柱の陰になって運転員から計器が見えなかったこと、運転員の訓練に問題があったことなどに注目し、国内の原発でもさかんに改善が行われたが、あまりにもこまごまとした対策にとらわれすぎてしまった。
 直接的な原因以外には、スリーマイル島の事故の大きな教えは、軽水炉では実際にメルトダウンが起き得るという点であり、莫大な崩壊熱の除去の方法が、他にないのかにもっと着目すべきだった。また、カーター大統領をはじめとするアメリカ政府がどのような体制をとって事故対応をしたかなどは大きなヒントとなったはずである。
 だが、メルトダウンは事故直前に発表された映画との関係で、チャイナシンドロームということでおとぎ話になってしまった。メルトダウンした核燃料をどのように始末するかというアメリカのプロジェクトには、誘われて日本の技術者も参加したが、規制当局も電力会社も肝心のメルトダウンを意識しての過酷事故の本格的検討や訓練には至らなかった。  
 福島第一原発の事故原因の探求は、スリーマイル島事故当時まで遡らねばならない。原子力規制委員会が7月を目処に作成を急いでいる安全基準も、当然二つの安全を意識したものであるべきだ。

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