日本エネルギー会議

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除染と監督

 除染作業の杜撰さが報道され、現地の自治体の長が驚きや怒りをぶちまけていたが、私もあっと驚いた。それは、先日台湾行政院原子能委員会の一行と川内村で除染作業を見せていただいた際、こんなことがあったからだ。
 川内村役場で除染作業を担当しているAさんが、役場のワゴン車を自ら運転して我々を村内のあちこちで行われている除染作業の現場を案内してくれた。村内は約1000人の作業員が働いており、除染のために切り落とした木の枝や刈り取った草などを積んだダンプカーが絶えず村道を走り回っていた。Aさんが「本当ならこのダンプを追いかけていかなければならないのですが」と笑いながら独り言を言ったのだが、我々には何を言っているのか理解出来なかった。
 「何故ダンプを追跡?」と尋ねると「さっきダンプから木の枝が一本道路に落ちましたよね。あれは禁止されているのです。ですから追いかけて行って注意をして拾ってもらう必要があるのです」と答えた。私は漫然と前方を見ていたが、枝が落ちたことにすら気づかなかった。それより、枝が「汚染物品」だという認識がなかったのだ。
 原発で働いていた頃は、汚染物品というのは、ビニールシートにくるまれて、搬出口に台車で持ち込まれ、丁寧に線量を測定して高ければ廃棄物処理室のドラム缶に入るものと思っていた。だが、川内村ではどこにもかしこにも汚染物品が印もカバーもつけずに転がっているということなのだ。
 さらに高圧洗浄水で屋根を除染している現場では、Aさんは「除染に使用した水の処理が大切で、下に落ちてきた水を出来るだけ逃さないようにするのですが、どうしても落ちた水はその付近の土砂ごと処分しなくてはなりません」と説明した。建物の除染はこんな大変なものかとあらためて驚いたものだ。
 隣接する山林は家の敷地から20メートルまで下草を刈り、立木の枝打ちが行われているが、ほとんどの場合、それ以上やっていた。また、除染が済んだところとそうでないところの境界には、木製の柵が張り巡らされていて、遠くから見ると山裾に白い線が一本引かれているように見える。これは柵の上から汚染した葉っぱなどが下に落ちてこないように設置されているものなのだ。「やはり上から汚染が落ちてくるのですか」と尋ねると「そう考えたのですが、実際には汚染はほとんど移動しないようです」との答えが返ってきた。台湾の一行もしきりに感心するほど、除染作業はよく行われているとの印象だった。
 川内村の大半の除染作業は村が発注者となり、ゼネコンと村内の土建業者がJVを組んで行なっている。村の住民である役場の監督が自分たちの村のために、目を光らせているのだ。 村の東のはずれに行くと、「ここが境界線で、これから先は警戒区域で、国が発注して除染をすることになっているところです」と説明があった。
 私の見た限りでは、村が直接監督をしている除染作業では、報道されたようなことは起きていいと思うが、国の管轄するエリアではそうではないのかも知れない。報道を聞いて、あらためてAさんたち村の職員の苦労がわかった気がした。
 私の家のある富岡町は警戒区域なので、今後除染は国が担当することになっているが、富岡町民である役場職員が直接監督するか、国のやる作業を再チェック出来るような体制を取ってもらいたいものだ。また、川内村は昨年末で一部を除いて全域の除染を終了したが、せっかくのノウハウを、これから取り掛かる町村の除染作業にぜひ活かしてほしい。

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