日本エネルギー会議

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外注化の問題点

 福島第一原発の事故対応で東京電力の社員が消防ポンプの操作も分からず、子会社など下請企業の協力なしには、なすすべもなかったことが指摘されている。業務を外注したことで、技能が外部に移転し、ついには外注管理さえも甘くなり、規制側から資料の要求があっても外注先頼みとなるなどの問題点が浮かび上がってきた。
 電力業界では子会社を始めとする外注先の企業は、指名入札の獲得を目指し、これをいつまで維持しようと努力する。その見返りとして会社のОBを受けいれることが、ずっと続けられてきた。もちろん表向きには「技術において他の企業では得られない専門性がある」ということにはなっている。原子力においては安全のために、なによりも安定が重要なことというのが、電力会社の言い分だ。
 外注において発注者は「甲」受注者は「乙」であり、甲乙の関係と言われる。電力会社では、保修部門の先輩社員が若手社員に、「受注者はお前にお辞儀をしているのではない。電力会社が支払う金にお辞儀をしていることを忘れるな」と教育していることから分かるように、金を出す立場は強いものだ。発電所の新入社員が工事会社と打ち合わせをした議事録の発電所側出席者欄にはなんと「○○技師殿」と書いてある。それらはすべて指名入札を取り続けようとする営業努力の一環だ。競争をしないで受注出来るということはそれほどメリットがあり、裏を返せば電力会社が楽をするかわりにそれだけコストが高くなっているということだ。
 「甲、乙」と言えば、14年前に起きた原電工事のキャスクのデータ改ざん事件のことが思い出される。日本原電から使用済燃料輸送用キャスクの発注を受けた子会社の原電工事は、中性子遮蔽材を組み入れる作業を下請けに再発注していた。しかし、納期直前となっても、これが仕様書通りの均一の濃さにならず、原電工事はデータを書き換えて日本原電に報告したことが、原電工事担当者の内部告発で明るみになり、遂には原電工事そのものが
この不祥事で抹消された。
 結果的には、日本原電が作成した仕様書には、物理的に不可能な仕上がりが書いてあったのだが、受注者である原電工事はそれに気づかず、なんとか仕様にあったものを完成させようとしたため(原電工事の技術力を疑われると考えたのかもしれない)事件となったものである。外注先は発注者である電力会社の社員の意向をなんとか実現しようと必至に動きまわる。
 外注化や固定化の問題はこれにとどまらない。業務が実質的に外注先に移ると、現場で問題を発見しても、これが管理部門まで上っていかなくなる。安全管理上の問題は現場で発見することがほとんどであるが、
(水漏れに気づくのは運転員のパトロールと下請けの掃除の作業員)改善に金のかかること、電力会社社員に負担がかかることは、法令法例違反でもない限り、出来るだけ言わないで我慢するという姿勢になる。
 外注化の弊害として技術維持や経済性以外に、危険な萌芽を発見しても声を上げなくなるという問題がある。規制側、電力会社、メーカーなど関係者は、福島第一原発の事故をきっかけに、外注化の問題点を整理して、抜本的対策を打つべきである。

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