日本エネルギー会議

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事故原因の歴史的分析

 東京電力は12月14日、福島第一原発の事故の総括を行い、「許可申請書で、事故時に作動すると説明してきた安全設備について、津波への設計上の配慮が足りなかった」と認めた。事故後に当時のNRCヤッコ委員長が「設計と立地の誤り」と指摘していたことの一部をやっと認めたかたちだ。建設計画を立てた段階で、東京電力として初の原発であったこととはいえ、アメリカの設計をそのままに導入し、我が国独自の検討が不足したうえ、立地にあたっては海抜10メートルという低い位置に建設したこと、非常用電源が水没の可能性のあるところに配置されていたこと、6機という多数号機を一つのサイトに並べたことなど配慮が不足していた点が、今回の事故につながる歴史的に最も古い部分である。国の規制側にも独立性、審査能力などの不足がありながら、原発導入による準国産電源の確保に目を奪われていた。
 次に東京電力は、この原発を40年以上にわたって運転保守してきたが、その間にも重大な事故原因を積み重ねてきた。配管の応力腐食割れ対策や燃料リーク問題、耐震補強などさまざまな改良改善を行なってきたが、重大事故につながる根本的な設計上の問題に手をつけることはなかった。また、海外における比較的長時間の外部電源喪失事故やベントフィルター追加などの情報があったが、これを安全対策として反映することを怠り、事故につながった。自然災害との複合的な事故も柏崎刈羽で経験していながら、しっかり対策が出来ていなかった。事故訓練が過酷事故を想定した本格的な訓練ではなく、形式に流れたものであり、過剰な外注化による対応能力の喪失などもこの時期に起こっている。国も訴訟などを配慮して、過酷事故は起こらないとの立場でいたが、これも事故につながるものであった。
 最近になって大地震、大津波の可能性があるという外部研究者からの最新知見に基づく警告に対して、稼働率の低下や多額の費用が掛かることを避けるために、規制当局をも巻き込んで、対策を先送りしたことが、事故につながる決定的な問題であった。
 高速道路のトンネルの事故でも見られるように、巨大な構造物や設備はその建設の段階、長い運用の段階、最新の知見が入った段階の三つの歴史的段階で、間違いのない安全対策が講じられなくてはならない。福島第一原発の事故を見ても、三つの段階のいずれかでしっかりした対策がなされていれば、大事故には至らなかったものと思われる。ヤッコ委員長は「設計と立地の誤り」と指摘したが、事故原因の歴史的分析をもって補足するならば、「その誤りを長い間放置したままの運用」と「警告に対して素直な反応をしなかったこと」も事故原因として加えるべきである。

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