日本エネルギー会議

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配られたファイル

 「県民健康管理ファイル」が県から自宅に郵送されてきた。透明カバーのついた24ページあるこのファイルは、県立医大が実施した基本調査に回答し、外部被ばく線量の推計結果が送付避けた県民に順次配布しており、健康についての様々な調査や検査結果をまとめて記録、保存できるようにした
「家庭用のカルテ」であると説明が書いてある。
 中身は、移り住んだ住所など本人情報、線量測定値記録、健康の記録、健診・がん健診受診記録が半分、残りの半分が放射線や健康影響の説明となっている。この内容は福島県のホームページからも見ることが出来る。記録などはすべて本人が記入することになっている。
 このファイルの問題点はいくつかある。まず、ファイルを配布された人が、10万人であり200万人の県民の5パーセントに過ぎないということだ。基本調査票が配布されてから1年半以上が経つが、現時点で回収されたのは47万人で全体の23パーセントだ。(原発のある相双地区でさえ40パーセント)、47万人のうち、被ばく線量の評価が終わり、結果を本人に通知したのは10万人となっている。調査開始の遅れと、調査票を郵送だけに頼ったことが響いている。
 つぎに、記入は個人にまかされているから、どこまで記入がされ管理されるかは不明だ。おそらく引き出しに入れて忘れられるだろう。個人の実施率はおそらく低いはずで、ファイルを配布したことにより形を整えただけだ。個人が記録した結果を県は集計し、集中的に管理する気はないらしい。原発など従事者が中央登録制度で集中管理をされていることに比べると、県のやっていることは管理とは程遠い。ファイルにはデータベースの構築として県民の長期にわたる健康管理と治療に活用、健康管理をとおして得られた知見を次世代に活用と書いてあるが、どのように活用するというのだろうか。
 放射線や健康影響の説明の部分も「既存の資料のツギハギ」としか思えない。ICRPを元にしているようだが、肝心な条件である「社会的、経済的要因を考慮に入れながら、合理的に、達成可能な限り」をすっかり抜かして、単に「放射線被ばくをできるだけ少なくすることが大切だよ」と説明されている。これを見たら北海道まで避難した一家も、自分たちの判断が正しかったと思うに違いない。
 「外部被ばくと内部被ばくで違うの」との問に、「放射線被ばくの合計の量が同じなら、外部被ばくも内部被ばくも影響は同じ」と答えているが、「外部被ばくは一過性だが、内部被ばくは放射性物質が体内に留まっているあいだ、被ばくし続けるから気をつける必要がある」と答えるべきだろう。また、内部被ばく線量を少なくするためには、「今回の事故後、流通している汚染された食品を選択的に継続して食べたとしても、…」とあり、あたかも汚染食品が流通しているかの誤解を与えている。
 他にも「緊急時被ばく状況」や「現存被ばく状況」などという聞きなれない用語を使っており、その用語解説には「緊急事態後の復興期の長期被ばくを含む、管理に関する決定をくださなければならない時に、既に存在している被ばく状況」という難解な解説がつけられている。隣のじいさんがこれを読んだら目をまわしそうだ。
 ファイルを配った県の保健福祉部健康管理調査室に電話し疑問な点について質したところ、担当者はこのファイルの中身は「県民健康管理調査」検討委員会で紹介してご承認いただいたとのこと。検討委員会の委員には県が委託している「放射線と健康アドバイザリーグループ」の
先生方がなっていると回答した。
 私の質問に対して担当者は、例によって「貴重な意見として上申する」と答えるのがやっとだったが、電話の最後に担当者が、「形式だけ整えて、中身をおろそかにしたのが、今回の原発事故の教訓です」と言ってくれたのが、わずかな救いだ。それにしても税金が無駄に使われているのは国だけではない。

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