日本エネルギー会議

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手元に残る金

 東京電力による個人に対する賠償は、川内村など今年4月に区域解除されたところでは、
5ケ月後の8月末で打ち切られたが、私のように自宅がいまだに警戒区域の中にある避難住民は
3カ月毎の賠償が続いている。賠償の内容は①避難生活等にかかる精神的損害 ②避難・帰宅費用
③一時立入費用 ④生命・身体的損害にかかる費用 ⑤就労不能等にかかる損害 ⑥検査費用
⑦財物価値の喪失又は減少 ⑧その他 となっている。
 ④は避難したことで病気になったり、持病が悪化したりしたことに対する費用で医療費、慰謝料、
交通費などが支払われる。⑤は職を失ったことに対して支払われるが、避難先で就職出来た人の
賃金は相殺されないことになっている。⑦はまだ支払い手続きが行われていない。
⑧は新たに避難先で買った家電製品など物品、家賃などだ。
 請求する際には、原則として領収書を付けることになっているので、
避難者が一時的に立て替えておく必要がある。領収書の要らないものは、①精神的損害、④の中の
慰謝料、⑤就労不能分の賃金だけだ。避難した人たちは、毎回多額の賠償金を振り込まれているが、
家電製品などの物品は立替払いなので、手元に現金が残るのではなく物として残っている。
 原発事故で避難して、金銭的にプラスとなっているのは、①精神的損害と④生命身体のうちの
慰謝料だけだ。病気でない人にとっては月10万円の精神的損害だけがプラスと言える。
それ以外のものはすべて物品かサービスに形を変えて支給されているわけだ。その10万円について
東京電力は、避難生活に必要な日常の衣服、光熱費を含むものとしており、10万円がまるまる
精神的損害というわけではない。これは文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が自動車保険を
参考に、そのような指針を出したためである。
 結局、避難者の手元に残る金は、最大で毎月10万円、年間にして120万円となる。
この他の賠償は、ほとんどが避難しなければ買う必要のなかった家電製品などに形を変えて、
避難先での所有物となっている。自分の家から何十キロも離れたところで一年半も暮らしている人に
対する精神的損害として、この10万円が妥当な額であるかの判断は難しいが、
この質問は今、持ち家に住んでいる人に「月10万円やるから、家から遠く離れた見知らぬ土地で
借家住まいをしてくれ」と突然、頼んで受け入れてもらえるかという質問と同じだ。
避難者の多くが少なすぎるのではないかと思いながらもこれを受け取っている。

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