日本エネルギー会議

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廃炉とマンパワー

 原子力委員会は先月、福島第一原発の廃炉に向けた課題として、廃炉作業が長期間にわたることを
考慮して、作業員の確保が二次、三次といった従来の雇用形態が適切かどうか検討すべきだと
指摘した。その後、東京電力が廃炉に当たる現場作業員が十分確保出来るとして挙げていた
登録人数が誤っていると福島県が「廃炉作業の進捗に重大な影響が出る」抗議し、
その結果、東京電力は工程表に示されている要員計画を訂正した。それに関連して線量のごまかし、
被曝手当のピンハネや現場を離れていく作業員が多くなっていることなどが報道されている。
東京電力は「要員の不足は生じない見込みだ」としているが、現場の作業者集めをメーカーやゼネコン
に全面的に依存している状況が浮かび上がってくる。
 高線量のもとになっていた瓦礫を撤去し、遮蔽を置くなど現場は改善されてはいるものの、
事故を起こした原発の廃炉は、通常の廃炉とはまったく違うレベルの環境だ。作業員は年間50ミリ、
5年間100ミリの制限で長期間働くことは出来ず、次々と交替要員が必要となる。
作業員が不足しそうだというが、これは手取りの日当が上がれば解決する話だ。
元請企業や下請企業が儲けようとするから、作業員が離れていくのだ。従来の定期検査の作業の
実態が、ここで繰り返されているに過ぎない。
 作業員の集め方、教育訓練、宿舎、通勤、賃金の支払い方、現場を離れた後も含めた被曝管理や
健康管理など、もう一度見直す必要がある。今のように短期の契約となれば、下請企業は作業員を
使い捨てにせざるを得ない。安定した作業員の確保のためには、下請企業や作業者を登録制として、
長期の雇用を前提とした被爆の多い作業と少ない作業の組み合わせを考える必要がある。
深刻となりそうなのは容易に補充の効かない専門技術者や監督クラスの人材であると私は見ている。
この人たちが現場から離れざるを得なくなれば、本当に作業が進まなくなる。
 原子力委員会はさらに先月末、廃炉の専門機関を設置することや、廃炉計画が効果的に実施されて
いるかをチェックする第三者機関をつくり、住民に状況を定期的に説明するよう提案している。
今後、安定したかたちで廃炉作業を進めるには、もっと綿密な計画を立てていかなければ、
国や消費者が負担する金が無駄遣いされる可能性が大きい。
 普通の廃炉は東海原発など事例があるが、事故を起こした原発は世界でも少なく、
日本では初めてのことだ。貴重な経験が積み上げられ、被曝やコストの低減のための新技術、
新工法、管理手法などの開発も期待される。それにもかかわらず、福島第一原発では相変わらず、
金で被曝を買うようなダーティーなイメージがつきまとっているのは残念でならない。

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