日本エネルギー会議

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子供の学校と親の介護施設がポイント

 東京電力福島第1原発の事故で全町避難し、今年の春に緊急時避難準備区域が解除となった広野町は、
一般住宅の除染が94%完了したことやインフラの復旧状況などを町民に伝え、帰還を促そうと、
町民に向けた説明会を実施している。町民5242人に対し、今年4月の解除以降、帰還したのは現在のところ
500~600人と約1割にとどまっている。町の復旧計画では、年内の帰還完了を目指しているが見通しは暗い。
 広野町の北側に位置する楢葉町では、8月に警戒区域が解除されたばかりで、住民の入域は自由になったが、
まだ居住は制限されている。私の家のある富岡町は楢葉町のさらに北にあり、第一原発のある大熊町の隣町で、
まだ警戒区域となっている。現在、富岡町の約1万5千人の住民は県内に1万人、県外に5千人が避難している。
当初、郡山市を中心に各地に散らばって避難していたが、現在では県内の1万人のうち5千人はいわき市、
3千人は郡山市と、都市部に集まりつつある。いわき市は気候も富岡町と似ており、避難前から行き来のあった
ところで人気が高い。富岡町と同じく、大熊町、双葉町、浪江町といったまだ警戒区域となっている町では、
県内避難者はいずれも、いわき市、郡山市、会津若松市、福島市、二本松市、南相馬市と、都市部に集まっている。
 都市部に集まってきた原因は、買い物などの利便性、病院や介護施設の数、仕事の見つけやすさであると
考えられる。就学児童を持つ世帯は、避難先に落ち着くと同時に子供の学校を決めたが、その後新たに
小学校に入学、中学校に進学する際に、何回も学校を変わらなくて済むよう避難先を移動するケースが多く
見られる。
 一旦、子供の学校が決まると、住居が固定化する傾向が大きい。友達も出来、小学校で6年間、中学校で
3年間、計9年間は転校をしたがらない。子供が既に都市部の高校に進学した場合、引き続いて都市部で
就職する可能性が高い。区域解除となり、学校が再開した町村では小学生、中学生の数は激減しており、
一学年1クラスにしかならない裏には、子供への放射線の影響が心配なだけではなく、このような事情がある。
 高齢者、特に病気や障害を持った高齢者のいる世帯は、近くに病院や介護サービスをしてくれる施設が
あることが避難先選定の大切な条件だ。これについても避難先で良い所が見つかっていれば、わざわざ不便な
所に帰還することは考えられない。いまだ、警戒区域となっている4町が都市部に建設しようとしている
「仮の町」は完成まで早くても3年はかかる。4町はいずれも、町長や議会が「5年間は全住民帰還しない」宣言
をしている。住民のうち、若い人は戻らないと決めている割合が高く、高齢者も帰還可能になる5年後、
10年後には自分で車を運転して病院や買い物に行けなくなると考え、このまま都市部に留まろうとする可能性が
高い。「仮の町」が高齢者や高齢者予備軍にとって、「終の町」になるかも知れない。

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