日本エネルギー会議

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安全研究のジレンマ

政府事故調の畑村委員長は報告書での所感で「思い付きもしない現象も起こり得る」と指摘した。新たに発足した原子力規制委員会の田中委員長は、10月10日の記者会見で、「例えば核テロ、航空機落下とか何かが起こっても、いわゆるシビアアクシデントに行かないような、環境への大きな放射能の放出が起こらないような、そういうことの対応を求めたいと思っています」と語っている。

中央制御室を爆弾で破壊されても、シビアアクシデントを逃れることが出来る原発があるのかどうかは、はなはだ疑問だが、要はシビアアクシデントもありうるとの想定で対策を考えるということだ。「矛盾」という故事にあるようにシビアアクシデントを起こさないようにすることと、シビアアクシデントを起こす外部的要因を探し続けることとは、それこそ「矛盾」する。大陸間弾道弾と迎撃ミサイルのように果てしない開発競争となる。

田中委員長の場合は、「起きても環境への大きな放射能の放出が起こらないような対策」と言っているので、盾が十分でなく、シビアアクシデントが起きることも、あらかじめ考えておくということになる。

これから、原子力規制委員会や原子炉の設計者は、原発の弱点を探り、どうすれば原発をシビアアクシデントまでもっていけるかということを、実機に即して研究しなくてはならない。スクラム後に莫大な崩壊熱が出る軽水炉を冷却出来なければ、スリーマイル原発や福島第一原発のように炉心がメルトダウンする。

冷却出来ないようにするには、水源、配管、弁、ポンプ、モーター、電源、格納容器のどれかを無効にすれば事足りるため、そうならないように、耐震強化、浸水対策、水素爆発対策、爆弾対策、安全設備の多重化を進めることになる。この研究内容や対策内容をテロリストが知れば、いわば敵に塩を贈ることになり、大層危険だ。だからといって、研究を秘密裏に行えば、規制委員会などが透明性を欠くということになる。原子力安全研究や原子力規制は、こうしたジレンマをも克服していかねばならない。

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