日本エネルギー会議

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私の考える福島の復興

東日本大震災とそれに続く福島第一原発の事故により大打撃を受けた福島県は、いまだ復興の途についたとは
言えない状況だ。3.11以前もご多分にもれず福島県も人口減少と高齢化、産業の空洞化「地方の衰退」の
真っ只中で苦しんでいた。企業誘致、地場産業の活性化、農林水産業の維持、外国人をターゲットにした
観光開発など、福島県も他県と変わらない施策を実施していたが、他との競争は激烈で、決め手を欠き見通しは
明るいものとは言えなかった。近年のわずかな光明として、県南の白河周辺の工業化がある。
福島空港は定期便が少なく、商業で言えば、県庁所在地の福島市でさえ、東北の中心である仙台の商圏に
なりつつあった。
今回の震災と事故により、福島県の面積の6パーセントに当たる浜通り地域は、当分の間、人の居住や
経済活動が出来ない地域となってしまった。この地域では、原発の廃炉に向けた工事等に限定した雇用が
発生するだけである。この雇用は現在のところ1万人規模であり、偶然にもかつて原発10基と火力3基が
雇用していた規模と一致する。
この地域から数万人が県内外に避難したため、この地域の人口はゼロとなっているが、逆にいわき市、郡山市、
会津若松市などでは人口増となっている。原発廃炉の工事のために他の地域から来た人たちは、いわき市などの
人口増加となっている。この一年、県全体では一万人の人口流出をしたが、避難者の多くがいまだ県内に
とどまっているので、この人たちを県外流出させることなく、労働人口、消費人口として活かすことで
県内の総生産を維持出来る可能性がある。
地域の復興は、福島の特長を活かして行くことにつきる。福島の特長の第一は、豊かな自然であり、
第二は東北の玄関口として首都圏からほどよい距離にあることである。豊かな自然のうち、太平洋沿岸部は
残念ながら津波によって数少ない海岸部の景勝地を失ってしまった。それ以外は美しい自然が残されており、
特に磐梯・朝日国立公園は、人工的な建造物による景観破壊を奇跡的にまぬがれている。猪苗代湖の周囲には
県の厳しい規制により高層リゾートマンションはわずかに一つを数えるのみである。
豊かな自然は、また有数の米どころ、果物産地を支えている。工業面では東北自動車道、常磐自動車道による
流通の優位性と一定の人口密度が白河、郡山、いわき市などに大規模な工業団地を成立させている。
沿岸部の原発、火力発電所は首都圏への主要電源であったが、その出力の半分を占めていた原発は、
事故により失われた。会津地方の歴史的建造物、工芸品、料理など伝統文化は全国的にも知られている。

以上、福島県の特長を概括したが、それを伸ばしていくかについて、私は次のように考えている。
(1)
これ以上、人口を県外に流出させないよう、全県で雇用、住居、医療、介護、教育などを確保充実させること。
これにより県外に避難した人も県内に戻す。
(2)
豊かな自然を活かして、グリーンツーリズム、田舎暮らし、特産品づくり、水質管理、ゴミや商業看板を
なくすことにより美観を徹底的に磨き、魅力を強化する。農林水産品についてはアジア市場を意識した
商品開発をする。
(3)
浜通りの原発周辺では、長期間続く原発の廃炉事業を、安定した雇用の場とするとともに、研究開発機関等を
つくり、放射性廃棄物に関る研究実践の一大拠点とすることで、関係者の地域周辺への定住を図る。
(4)
浜通りの原発周辺では、人がいなくなることを逆手にとって、メガソーラー、地上の風力発電、沖合風力発電、
地熱発電、大規模な再生可能エネルギー開発を進める。石炭、石油などの化石燃料の貯蔵基地、
メタンハイドレードなど海底にあるエネルギー資源採掘の拠点にも挑戦する。
(5)
首都圏への送電線を活かして、高効率の火力発電所を沿岸部に数多く建設し、首都圏への電源地域としての
地位を回復する。
(6)
常磐自動車道の完成、東北自動車道、小名浜港、相馬港の活用により、沿道、沿海の工業地域をさらに拡大し、
雇用力を向上する。
(7)
会津地方には日本の伝統文化である生活様式、人々の考え方が凝縮したかたちで色濃く残っている。
これらは他の地方では既に失われ、世界的に見ても貴重なものであり、この文化をこれからの世界中の人々の
目指す衣食住、芸術、人生、教育などに活かすことを試みる。
(8)
今回の原発事故で、放射能による生産の減少と大規模な風評被害が発生した。農林水産の産物の生産販売、
県外からの人の流入などに大きな障害となっている。これについては国による除染や安全性のアッピールなど
忍耐強い努力をしつつ、時間の経過による放射能の減衰と風評が収まるのを待つしかない。

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