日本エネルギー会議

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規制委員会の役割

ようやく発足した原子力規制委員会のメンバーが9月19日、揃って共同記者会見に臨んだが、「自身の適格性をどう考えているのか」など、二時間にも及ぶ記者の執拗な質問に、委員たちがじっと耐えていたのが印象的だった。
その中で、「おやっ」と思ったのが、規制委員会の役割についての回答だ。委員たちは異口同音に、「原発などが科学的、技術的に安全かを判断するのが規制委員会の役割」と答えていた。確かに事故は科学的、技術的な事象として発生するが、その原因はハインリッヒが説いたように、人的、社会的なものも含まれており、それらが物的事象につながったり、物的事象を拡大したりすることに失敗して災害となるのである。(ハインリッヒの五つの駒)
福島第一原発の事故においても、大津波の警告の見逃しがあり、対応体制や訓練の不備が大災害につながっている。原発が科学的に、技術的に安全かだけで判断するとすれば、このような原因はあらかじめ防ぐことが出来ない。原子力規制委員会の役割は極めて限定的になってしまう。
原発のような複雑で大規模な装置を運転しメンテナンスしていくには、組織運営の問題を克服しなければ、どんなに安全装置をつけてもダメだ。先日その役目を終えた原子力安全委員会が、長時間の電源喪失は考慮しなくてもよいとしたが、委員会は実際に事故時の電源復旧には、組織的あるいは資機材の供給にどのような困難が伴うかイメージすら持つことが出来なかったのだろう。
原発は大勢の人や会社が協力して作り上げ、維持管理するものであり、組織内の情報の伝達一つとっても難しいものだ。福島第一原発の事故では、メンテナンスに多層構造を採っていたことが、事故対応の障害になることを経験したばかりである。原子力規制委員会が、原発について科学的、技術的に安全かを判断するだけでなく、現場的センスで組織の問題についても深く検討することが必要と考える。
その意味で、今回、原発の実際の運転やメンテナンスの現場で長年苦労を積み重ねてきた人が、委員に選ばれなかったことは問題である。適格性について単に事業者側にいた人を除外するというのは、まったく形式的なことであり、規制委員会のスタートの時点から最高の安全を確保するための陣立をしなかったということになる。

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