日本エネルギー会議

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脱原発デモにみる次世代への思い

週金曜日に官邸周辺で行われる脱原発デモが、社会現象として注目を浴びている。このデモの特徴は年金生活をしている高齢者や小さな子供連れの母親などがいること。いままでデモなど無縁だった普通の人が個人の意思で参加していることだ。また、長く続いていることも今までにはないことで、野田総理の大飯原発再稼働の決断で、目標を失うどころか、ますます盛り上がりを見せている。
いままでのデモはほとんどが、本人のためのデモであったが、今回のデモの参加者は口を揃えて「子や孫の世代にツケを残さないため」「この子の将来のため」に今行動をしなければいけないと思ったと言っている。こうしたデモは核兵器廃絶、安保反対、ベトナム戦争反対、温暖化防止と続いている系譜とも捉えることが出来るが、政治団体、労働組合が主導していないところが、今回の脱原発デモの特徴でもある。デモに参加している人は、自分たちが選んだ政治家が、自分たちの思いの通りに動かず、大飯原発を政治判断と称して再稼働させ、万が一の場合は政府が責任を取るなどと言っていることに苛立ちを覚えている。デモには参加していないが、この感情を共有している人はたくさんいるはずだ。
デモに参加している人は、リスクを犯してまでエネルギーを求める社会経済のあり方に疑問を持ち、自分たちもその原因者であったという気持ちが心の奥にある。高度成長を支えてきた世代がリタイアしたことで、自分たちのやってきたことを振り返り始めたという側面もある。韓国で難航した中低レベルの放射性廃棄物の処分サイトが決まったのは、宗教家が「次世代にツケを回すのは人間として許せない」と先頭に立って解決を訴えたためであると言われている。
かつて原子力を推進した人たちも、次世代がエネルギー不足で困らないために原子力開発は不可欠と言っていた。そこにエネルギー需要は伸び続け、原子力の危険性は人々が容認出来る水準で管理出来るという前提があった。福島第一原発の事故はそのことに疑問を突きつけた。今回、脱原発を主張する側には、「原子力なしの場合の危険性」を乗り越えられるという前提がある。人々は節電でも省エネでもやる気になれば出来ると信じている。もし大停電でも起き混乱すれば、そのことに疑問が起きる。共に次世代のことを考えているのであれば、「原子力ありの危険性」と「原子力なしの危険性」をより客観的に検証し、双方の持つ危険性を少なくする努力をしなくてはならないのではないか。

2012.8.2
北村 俊郎

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