日本エネルギー会議

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「原発推進者の無念」の著者が原発事故1周年後の心境を語る その1

原発の運転再開をめぐっての論争が沸騰しているが、今年の夏に向かっての大飯原発の運転再開は時間切れとなりそうだ。大規模な停電を起こせば、社会的混乱になる可能性が大であり、人命も危険にさらされる。政府が脱原発依存路線を模索し、国民にそれを問うのはよいとして、ここ数年間の緊急的電力確保は原発の再稼働によらなくてはならない。タイムスパンの違う問題を混同してはならない。私はそのことを踏まえてあえて避難生活を須賀川市で送っている避難者の立場から運転再開の条件について三点述べておきたい。
まず、第一点としては新たな基準に基づいて設備的改善が行われることだ。また、それを運用するためのノウハウも関係者が身につける必要である。すぐに出来るものと時間が掛かるものがあるが、その時間を可能な限り短くしてリスクを少なくする努力が見えることが必要である。
第二点として自然災害、テロなども考えると設備的改善だけでは残余のリスクがなくならないために、どうしても住民避難も含めた防災体制の見直しが必要だ。福島第一原発の事故における住民の被曝や住民避難の混乱を反省し、しっかりとした防災体制を国と自治体で全サイトを対象に構築する必要がある。
第三点として、事故が発生した際に、これに対応し、速やかに収束させることの出来る体制を持つことを挙げたい。海江田前大臣が「官邸と原子力安全・保安院と電力会社の伝言ゲーム」と評した体制では、原発事故の対応は出来ず、国民の安全と国土の保全は果たせない。原発事故の指令塔となるべき日本最強チームをつくり、絶えず訓練を積み重ねて、待機させておく必要がある。私はフランスのように、電力会社のベテラン運転員・保修員とメーカーのベテラン技術者の組み合わせによるチームを作る以外にないと考えている。また、海外の専門技術者の協力を得られるようにチャンネルを持つことも大切である。
今行われている対策を見ると、第一点が中心となって、第二点、第三点に眼が向いていない。メディアもこの点において追求が甘い。明日にもまた事故が起きないと言えないことは、福島で実証済である。第二点、第三点に共通していることは、単に形を作っただけでは役に立たず、実戦的な訓練を積み重ねることでその機能が果たされることだ。国や電力会社が住民に対して緊急に運転再開を要請するのであれば、この点に留意してその成熟度を住民に示すことが運転再開に理解を得るための正道である。

2012.5.7
北村 俊郎

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