日本エネルギー会議

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二つの苛立ち

 福島をとりまく現状に関して、福島第一原発の事故で被害を受けた住民には二つの苛立ちがある。一つは反対派やそれを利用したメディアの食い逃げ。もう一つは推進派である政府の原発推進一点張りの態度だ。
 まず、反対派や学者と彼らの主張を流したメディアは今回の事故で膨大な情報発信、講演、出稿をした。福島県内の書店にはそうした本がずらりと並んでコーナーが作られた。その中には事実を誇張するどころかほとんど嘘と言ってよい内容だったり、まったく当たらない予測をしたものが存在した。
 今に至るまで福島県民を悩ませる放射能よりたちの悪い風評被害の元を撒き散らした連中は、世間に名前が売れ、荒稼ぎをした後、涼しい顔で食い逃げを決め込んでいる。福島第一原発の事故以前から書店に行くと棚には反原発本しか並んでいなかった。
 書店のオーナーは「反原発の本でないと売れませんから」と言い、出版元も同じような反応だった。経営が厳しい出版業界にとって本音でもあったし、保守系のやることを批判する側に立っているので、彼らにとって望ましい立場は守られていた。
 さぞかし今回の事故は千載一遇のビジネスチャンスだったのだろう。住民としては原発事故が彼らの儲けのネタになったことは悔しくてしかたがない。自主避難者の行動も元をただせば彼らの情報に過激に反応したからだ。
 自民党は事故後に政権を奪還。世論を気にしながらも「世界一厳しい基準」を錦の御旗にして原発再稼働に力を入れ、メーカーの原発輸出を支援した。他の原発立地自治体では、多くがいままでの事故や不祥事の時と同じように速やかな再稼働に向けた動きを見せた。
 安倍総理はオリンピック招致活動で世界に向かって「原発事故はアンダーコントロール」と胸を張り、除染作業が終了した地域を次々と解除してきたが、6年目の震災追悼式の挨拶から原発事故のことを抜いた。道路の開通式などには必ず総理や大臣が顔を出すにもかかわらず、である。それは自らの業績の誇示としか映らない。
 福島県議会の議決、知事のいくたびもの第二原発の廃炉要請にもかかわらず、いまもって東京電力は国のエネルギー政策にかかわる問題として廃止決定を先送りしている。政府は区域の解除や原発再稼働に前のめりであるが、福島県民の納得、安心は得られていない。
 国会も議長が国会事故調の報告を受けたままで、報告が指摘している政策や組織などの問題を国会で取り上げる様子もない。魚は頭から腐るというが、福島第一原発の事故はまず国会から風化してしまった。この現状に対して一強の自民党はもちろん、野党からも声が上がらないことに住民たちは苛立ちを持ち続けている。

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