日本エネルギー会議

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補償打ち切り

 東日本大震災と原発事故により全住民が避難した福島県浜通り地域では、避難区域の指定解除が相次いでいるが、現地では避難した住民の間で補償の打ち切りへの不満の声が出ている。
 今も続いている補償項目としては、事業者に対する営業損失、一部住民がADRに仲介を申し出ている慰謝料の増額、生命身体損害などであるが、補償額が累計5.4兆円から7,9兆円に増加したこともあり、東京電力はなんとか補償を打ち切ろうと努力しているようだ。
 補償に関して住民を支援している団体の弁護士によればADRのトップの交代もあって、近頃は紛争仲介をするADRが以前のように避難者を支援しようとする立場ではなく東京電力寄りと思われる仲介案を出すことが多く、なかには仲介をしようとしない場合もあるようだ。このような変節の裏には増大する負担に悩む政府の圧力があるのかもしれない。
 対象に高齢者が多いのが生命身体的損害の補償。これは避難に伴って怪我をした、病気になった、あるいは持病が悪化したことに対して医療費、交通費、慰謝料、診断書作成料を支払うというもの。
 交通費と慰謝料(1日4200円)は入院、通院の日数比例となっている。医療費は現在まで国が健康保険税と自己負担額を免除しているために、健康保険で治療出来る範囲では請求は発生しない。腰痛などでマッサージなどに通っている人は通院の回数が多いため慰謝料が多額になる。このような傷病は一進一退で治療が長引くのが特徴だ。
 高齢者の多くがもともと高血圧、腰痛などの症状で病院通いをしていたため、避難先で通院を再開して請求をする人が多かった。避難で食生活が乱れカップ麺ばかり食べていたので糖尿病になったとして請求した人がいるという笑い話さえ聞こえてきた。
 当初、通院回数は月の日数の半分を限度にしていたが、その後は制限を撤廃しているが、治療や入院とリハビリの慰謝料を同一にしたことは適切ではなかったようだ。東京電力は支払いの条件のひとつとして事故との因果関係について医師に「関係あり」「関係なし」「関係は不明」の判定を求めている。
 当初は「因果関係は不明」についても補償をしていた例もあるが、その後認めなくなった。東京電力は本人に対して主治医などに症状などを問い合わせることについて承諾書を提出させている。因果関係については不明とする医師が多く、初期の段階で、これを理由に多くの人が補償打ち切りとなった。
 最近、いままで継続して3ヶ月毎に支払われてきた請求に対して突然、「対象外」を通告されて困惑しているケースが出てきている。「医師の書いた診断書に症状は安定していると書いてある」、「症状の悪化は避難によるものより加齢によるものと考えられる」、「既に十分に支払われたものと考える」など一方的な主張で避難者側が納得出来るような理由でないことが多い。
 事前に方針など示さず、突然に合理的な説明もなく今まで受けていた補償が打ち切られたと憤慨する避難者もいる。避難者が合意出来ないとそのままにしていると支払いは永久にゼロ。せめて診断書作成費用だけでも貰おうと渋々合意すればそれで終わりだ。
 あえて打ち切りを不服としてADRに申立てをする人はごく一部だ。しかも、その見通しも先に述べたように明るくはない。高齢者は亡くなってしまえば病気に対する補償もそこで終了する。結局、こうした強引な補償打ち切りを許している原因は、加害者である東京電力側が一方的に示した基準や方法で被害者に補償が行われるところにある。

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