日本エネルギー会議

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葬儀の費用

 最近、福島県内の民報テレビで盛んに流れるコマーシャルがある。葬祭ビジネスの「さがみ典礼」のものだ。使っているタレントは左とん平。すっかり年をとった彼が女性オペレーターに対して言うセリフは「葬儀の費用っていくらぐらい? 後で追加なんてないよね」というものだ。答えは「さがみ典礼にお任せ下さい」。
 自分たちの葬儀のことを考えておかなければならない世代が多くなりその手のコマーシャルが新聞、テレビで増えている。セリフは冠婚葬祭がなかなか予算には収まらないものだと思っている人に対してその一番気になるところをうまくついている。逆に考えれば、世間にはぼったくりの冠婚葬祭業が数多く、思いがけず嵩んだ費用に困惑した経験のある人が多いということだろう。
 このセリフを聴くと、今年になって廃炉、除染、賠償などの費用が当初見込みより大幅に膨らんだ福島第一原発の廃炉費用のことをつい連想してしまう。2013年には2兆円とされていた廃炉費用が昨年末の経産省試算では4倍の8兆円になった。
 賠償が5.4兆円から8兆円に、除染が3.6兆円から6兆円になど、全事故処理費用も11兆円から21.5兆円と2倍に跳ね上がった。
 いったいどういうことか、当初意図的に過小な金額を出したのではと思っていたら、先日、民間のシンクタンクが50~70兆円という試算を出した。経産省試算では不明としていた解体廃棄物や汚染水の処理処分費などを入れたこともあるが、より現実的であることは確かだ。これからは経産省の予想も徐々に増えていくものと思われる。
 問題なのは、ショックを与えないように時間をかけて小出しにしていく経産省のやり方だ。葬儀の費用ではないが、最終負担をしなくてはならない国民の気持ちを考えれば、国の原子力行政に対する不信感を助長するなにものでもない。「後で追加なんかないよね」と心配する国民の声が聞こえていないのか。
 福島第一原発の事故以前からずっと採ってきた国や電力会社の「聞かれなければ言う必要はない。それは嘘にはならない」「確実でないことは言う必要はない」という情報公開についての国民を馬鹿にした姿勢がいまだに続いている。原子力ほど不信感を持たれるとその後の対応がどうにもならなくなるものはない。
 それなのに不信の種をばらまくのは何故か。政治家や官僚が自分たちの立場を悪くしないように考えているのならそれは逆効果だ。
 ここまでやればどのような結果になり、それにはいくらかかるか、国際的に見てどこまではやらなくてはいけないか、などをなるべく具体的に前もって国民に明らかにする、そしてそれはこまめに改定していくことが、原発の復興と事故処理費用を必要以上に膨らませないため必要である。
 「さがみ典礼」のコマーシャルには、ほかに「墓はつくらずに海に散骨という方法があります」というものもある。遺族にあとあと手間をかけさせないようにと思っている高齢者のために企画したものだろう。これを見ると一番安いとされている汚染水の海中放流を連想してしまうが、国民には事故処理のさまざまなやり方とそれにかかる費用の対比を示すことも大切だ。 

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