日本エネルギー会議

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浪江町の申立て

 東京電力福島第一原発事故の精神的損害賠償(避難させたことに対する慰謝料)は避難指示区域の住民に対してその避難の期間によって月10万円が支払われたが、これを不満として1人月35万円まで増額を申立てたのが浪江町の住民約1万5千人だ。 
 平成25年5月に申立てを受けた原子力損害賠償紛争解決センターは、平成26年3月に和解案(1人当たり月10万円の賠償に5万円を上乗せし月15万円とし、75歳以上の高齢者にはさらに3万円を上乗せする)を提示したが、東京電力は一律増額すれば他の地域と公平でなくなると和解案を拒み続け交渉は停滞してきた。
 ここにきて、75歳以上のある1名の町民について東京電力が和解案を受け入れるとし、住民側の代理人となっている町もこの1名については和解する方針を示した。平成25年5月の申し立て以降、和解は初となる。住民側を代表する町が東京電力に折れた形だが、そこには集団申立に係る難しい事情がある。
 浪江町以外の町村では、精神的損害賠償は各自が東京電力の決めた様式で請求し、すでに5年分から10年分を月10万円の基準で1人750万円~1450万円をまとめて受け取っている。
 浪江町が一律増額にこだわれば、東京電力はいつまでも強制力のない紛争解決センターの和解案を受け入れないと思われ、高齢者は一銭も支払いを受けないままに亡くなっていく可能性が高い。かといって強制力のある訴訟に持ち込めばさらに町や住民の負担は大きくなる。町としては高齢者を人質に取られたかたちで正に苦渋の決断を迫られた。
 それでは他の町村で、すでに合意して受け取ってしまった人たちは、浪江町と東京電力の合意を受けて増額分の請求が可能かという問題が出てくるが、それに対しても東京電力は個別事情によるものとすると思われる。
 浪江町以外のどの町村も集団申立の動きはなく、今回の浪江町の合意に対しても「住民ひとりひとりの個別交渉」とする公算が強い。この件に対する町に対する住民の問い合わせもあまり多くはないようだ。町村や支援団体も住民に対して個別事情により東京電力に増額要求するよう促す動きはまだ見られない。

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