日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

福島県の将来(5)

 福島県は人口減少に歯止めをかけるため自然増に加え、県外からの移住者による社会増を目指している。今回はショッピング、スポーツ、アウトドアなど余暇の過ごし方から各世代に福島県はどのようなものが提供出来るのか現状と将来を考えてみたい。 
 地方の暮らしでは共通したことがある。それは日常の買い物や娯楽は住んでいる町のスーパーマーケットや小さな商店で済ませ、休日になれば県庁所在地など人口数十万人の都市の商業施設や娯楽施設に繰り出すという生活パターンだ。
 福島県でも従来、休日に行く先は県北地方で言えば福島市、県中では郡山市、県南では白河市。会津地方は会津若松市、浜通り地方はいわき市であった。よほどのことがない限り、若い人たちも東京や仙台のような規模の大都会に行くことはなかった。 
 だが、東日本大震災より少し前から変化が起きていた。高速道路が徐々にではあるが整備されて仙台へのアクセスが改善され、車で1時間程度の比較的手近な栃木県の那須、茨城県のひたちなか市、仙台の南にある名取市に若者向けのアウトレットやモールがつくられたことだ。
 また、仙台市や東京などの中心部にダイレクトに行ける便利で新幹線より安価な高速バスの運行が増えた。休日、仙台市の目抜き通りには東北各地からの高速バスがずらりと並んでいる。
 この動きに呼応するように地元デパートの衰退が起き、いわき市の大黒屋、福島市と会津若松市の中合百貨店、郡山市のうすい百貨店がそれぞれ廃業、縮小、外部資本参加となった。震災前にデパートに行くと店内は閑散としており店員の多さばかりが目立っていた。
 そこに東日本大震災、原発事故があり、浜通り地域からいわき市、郡山市、福島市、会津若松市などへの人口移動、大量の除染作業員の流入で復興需要と賠償景気が起こった。福島県から他県への移動もあったがそれはまもなく収まった。
 県内の都市部のデパートや大型商業施設はここ数年大いに賑わったが、個人に対する賠償や各地の除染作業も峠を越え、事故から7年目の今年からは消費は地価と同様に落ち着き始めている。
 杜の都仙台市は東北最大の都市として、東北全域から人を呼べる魅力を持っており、東北道による福島市など県北部を商圏化するとともに常磐道の全線開通によって南相馬市など福島県の浜通りも商圏化しつつある。
 人口の多い郡山市、白河市、いわき市は仙台市からは距離があるため仙台市の商圏とはならず、人々は全国どこにでも見られる国道沿いの外食、車関係、ホームセンターのチェーン店、駅ビルの商店街に車で買い物に行くしかない。県内にはスターバックスコーヒーが郡山市などに数店あるのみである。
 プロスポーツにしてもJ1サッカーチーム、プロ野球チームは県内にない。大相撲の本場所も東北にはない。スタジアム、コンサートホールなども遅れたままだ。復興五輪で野球・ソフトボールの福島開催が決まったが、福島市の県営あづま球場以外は施設面で合格水準に達していない。
 首都圏や仙台市に若い世代が惹きつけられて行く中で、福島県内の商業施設の存続が徐々に苦しくなっていくと思われる。それではますます若い世代の大都会への人口流出を招くことで悪循環が続くことになる。
 今後は、モノやサービスの豊かさを首都圏など大都市と競うのではなく、身近なところに自然と親しめる場所があること、伝統文化やこだわりの手作り品の開発に関わり、大都会では失われた地域の連帯感のある暮らしに価値を見出そうとする若者や、喧騒の都会から離れて第二の人生を静かに過ごしたいシニア世代を福島県に集めて行く方向にいくべきである。
 それには米や野菜作りや海釣り・渓流釣り、山歩き、山菜採りなどが田舎暮らしの必須アイテムで、福島第一原発の事故でばらまかれた放射能の汚染とそれに伴う風評の解消が欠かせない。
 7割以上を占める膨大な山林を除染するのは莫大な費用がかかるため国の力をもってしても困難であり、放射能の自然減衰と風評が収まるのを待つしかないが、福島県が田舎暮らしに最適な場所であると認められるまで自治体も住民も郷土愛をもとに粘り強くやるしかない。
 また、その活動に都会育ちの若者やリタイアーした元気な高齢者を巻き込んで行くことも大切なことではないか。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康