日本エネルギー会議

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福島県の将来(2)

 福島県は人口減少に歯止めをかけるため自然増に加え、県外からの移住者による社会増を目指している。それには「雇用」「教育」「医療・介護」「住」「食」「交通」などが魅力的であることが必要だ。「自然」「気候」「面積」「海洋・湖沼・河川」など地理的条件や「歴史」「伝統文化」を活かすことも求められる。
 今回以降、これらについて首都圏育ちながら、ここ20年ほどは福島県に住み原発事故による避難生活を送った自身の経験から福島県の現状を評価し、将来を考えてみたい。

(福島県の雇用)
 福島県民がどこで働いているかといえば6割がサービス業などの第三次産業。建設、製造などには3割、農林水産は1割だ。日本は先進国の特徴でもある第三次産業が過半を占めて福島県も同様だ。
 雇用の6割を占める第三次産業はいわゆるサービス業で、小売、運送、飲食・宿泊、教育・介護・医療など。電気や通信もここに入る。福島県でも高齢化に伴って医療福祉での雇用が増加している。人口減少の影響で年々少しづつ経済規模が縮小を続けているが、それでも人手不足が深刻だ。
 この人手不足が県内企業の継続困難、県内への企業進出の障害になるという悪循環に陥る危険性がある。今後は県内の大学、高校の卒業生がいままで以上に首都圏などに流出することを防ぐ必要がある。
 人手不足解消の方策の一つである外国人労働者は東北地方全体では少なく、福島県内に約9000人、人口に対する比率が0.46%と47都道府県中37位。東北地方では宮城県以外はすべて福島県以下だ。
 第三次産業の売上は第一次産業、第二次産業で働く人々の消費に依存しており、特に第二次産業の雇用増が発展の足がかりとなる。それ以外の第三次産業の雇用は観光に求めることが多く、全国的にも観光立県を目指す傾向が強くなっている。福島第一原発の事故は第一次産業とともに第三次産業の観光に風評被害によって大きなマイナスの影響を与えた。現在はこれを元に戻す努力が国内外に向けて続けられている。
 温暖な気候や高速道路など交通の良さ、首都圏から遠すぎない距離、広くて安価な土地、豊富な労働力が第二次産業誘致の有力な条件であるが、この点で、県南部は製造業の立地に適している。福島県は東北6県で工業生産額が一番多いことはあまり知られていない。
 製造業が多く存在するのは白河市、郡山市、そして港湾のあるいわき市などを中心とした地域だ。大規模な工業団地が造られ、その数は現在も増えつつあり、それらの地域では人口も維持出来ており財政も豊かである。
 白河市、郡山市は内陸ではあるが平坦で人口もあり、東北自動車道、東北新幹線が通っていることから製造業には適地である。最近、伸びが目立つのは医療機器だ。東北自動車道白河インター近くに内視鏡で世界的シェアを持つオリンパスが昨年、新工場を完成させた。会津地方は人口減少が激しく、冬季の積雪、アクセスの悪さから目指したIT産業の集積は次第に難しくなっている。
 浜通りは、いわき市以外に工業的な基盤はないが首都圏への大電源として原発、火力が数多く建設されてそれだけで1万人程度の安定した雇用が確保あり、財政も潤っていた。
 福島第一原発の事故後も火力の復旧と原発の廃炉で従来程度の雇用は確保されており、避難区域が解除されたあとは、蓄電池やドローン製造など新たな工場誘致も始まっている。ただし、家族は大半が県内の他地域で暮らしているため、第三次産業の発展にはつながりにくくなっている。
 除染が進んで避難指示が解除された自治体では再生可能エネルギー関連など新たな産業招致が進んでいる。広範囲な除染や東日本大震災からの復興に伴う建設業の繁栄はすでにピークを越えてこれから下降線となるが、求人倍率は建設業をトップに全体で1を越えており、現地の人手不足はあいかわらず厳しいものがある。
 原発事故の後、県は県内で必要とするエネルギーを再生可能エネルギーだけで賄う目標を立て、同時に関連の産業集積に力を入れている。再生可能エネルギーによる電力の自給率は現在約30%に近づいている。小水力と太陽光がほとんどであるが、これから風力発電も伸びそうだ。原発(廃炉)、火力といった従来型のエネルギー産業を確保しながら、今後成長が期待出来る分野で他県と競い合ってどの程度企業を育てられるかが福島の将来に大きく影響する。
 次回は第三次産業の成長株である観光業について。

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