日本エネルギー会議

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帰還を強制せずの真意

国は富岡町、浪江町に対して今年の春に「帰還困難区域」を除き避難指示を解除する方針であり、各地でさかんに住民説明会を行っている。富岡町は住民の3分の2、浪江町は10分の9が元住んでいた所に帰還出来るようになる。説明会の会場はどこもほぼ満席。住民の関心は高い。
説明会で配布されるのが内閣府原子力災害現地対策本部が作成した、「避難指示の解除について」という資料だ。そこには次のようなことが書かれている。  

避難指示の解除について
・避難指示は、ふるさとに「戻りたい」と考える住民の方々も含めて、一律かつ強制的な避難を強いる措置です。
・避難指示の解除は、「戻りたい」と考えている住民の方々の帰還を可能にするものです。
・ただし、帰還するかしないかは、当然のことながら、お一人お一人のご判断によるものであり、国が避難指示を解除したからといって帰還を強制されるものではありません。
・避難指示が解除されても、国による様々な支援策が終了するわけではありません。

一読すると、住民の気持ちを忖度し、いきとどいた配慮をした内容のように思えるが、じっくり読んでみると問題があることがわかる。
三段目のパラグラフは、丁寧語が多く、「住民の意思」を尊重するとへりくだっており、これで住民の反発や不安をかわそうとする意図がありありだ。また、四段目のパラグラフは住民に対し今後共、アメを配り続ける約束であり却って住民に過大な期待を抱かせるものだ。
 普通に考えれば、「避難指示の解除」により住民は帰還するのが原則であり、帰還後は自由にどこに移動してもかまいませんというのが筋ではないか。「住民に帰還してもらい町の復興に協力してもらいたい」というメッセージはどこにも感じられないが、はたして国や町はそれでよいのか。戦後の日本ではしばしば自由の履き違えが見られるが、何よりも「住民ファースト」にしておけば無難という行政の安易な考えが見て取れる。
 「お一人お一人のご判断による」というのは各人の仕事、学校、病院買い物など利便性による判断ということだろうが、安全性について除染後の放射線量の数値だけを示して「お一人お一人ご判断」と住民の自己責任に押し付けているとも取れる。
 帰還しない判断をした住民は、いつまでも避難中ということになるのか。それとも誰も避難している人はいなくなるというのか明確ではない。そこで賠償や様々な優遇措置(介護保険料、健康保険税と自己負担の免除、固定資産税の免除、高速道路の無料措置、NHK受信料の免除、月6万円の家賃補助など)について帰還する、帰還しないで差がつくのか不明であり、文面通りだとすると今後共全住民が対象となり続ける期待を与えている。これからは帰還住民にこそ手厚い支援をしていくことが必要ではないのか。
 現状は、既に避難先などに家を購入し、仕事や学校も含め生活がその土地に定着したにもかかわらず、住民票を元の町に残している人が大半だ。それは賠償や優遇措置に期待してのことである。そのような人に対して国も自治体も住民票を移すように指導、指示は行ってこなかったし、その実態もきちんと把握しようとはしなかった。これをそのままにして、曖昧な「避難指示の解除」をすれば、問題はますます複雑になりそうだ。
 国や自治体の及び腰の対応が、避難住民同士、そして避難先の元からの住民と避難した住民との間の亀裂を拡大し続けることになる。薄く広く集めた財源で特定の住民に思い切り手厚い措置をしてその痛み(反発や怒り)を和らげるという、昔から原発立地地域で行われた手法が、原発が事故を起こした後でも使われているのは、なんともやりきれない。

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