日本エネルギー会議

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想定外と言わないように

昨年のベルギーのテロ事件で、犯人たちの当初の標的は、原子力発電所であったことが後日判明したが、すでに9.11の際、実行犯はニューヨーク市の原子力施設にジェット機を墜落させることを考えていた。日本でも原子力規制委員会がテロ対策を重視するなど、世界中でテロ対策の充実が図られている。
 核テロの議論の中心は、テロリストによる兵器級核物質の窃取や「汚い爆弾」の製造であるが、原発を暴走させる住民を不安に陥れることもテロリストの狙いとなる。フェンスや監視カメラなど機械的な防御設備は強化され、原発内部で働く人の身元調査や搬入品の検査なども厳重に行われようになった。
 ベルギーの地元紙が報じたところによれば、ブリュッセル連続テロの実行犯、ブラヒムおよびハリドのアル・バクラウイ兄弟は、ベルギーの原子力当局長官の家の前に隠しカメラを設置しており、その映像は警察による捜査で、パリ連続テロ容疑者のアパートで発見されていた。
 そこで気になるのが、原発の幹部など関係者がテロリストに誘拐監禁され、犯人からその命と引き換えに原発の安全を脅かす燃料ブールの水位を下げる要求をされるようなことは想定しているかということだ。いくら機械的防御施設を強固なものにしたり、構内に出入りする者の身体検査を強化したりしても、人質を取られた場合には、まったく役にたたない。外部から原発を停止させるのは送電線や変電所を攻撃すれば済むことだが、原発に過酷事故を起こさせるのはやってはいけない操作を強要することでしか起こせない。
 発電所長は運転手付きの車で、運転員はマイクロバスで送迎しているが、これに警備員を同乗せてはいない。寮や社宅も警備は一般的なものしかない。所長でもプライベートで街中に外出する場合はガードがついているわけでもない。北朝鮮による拉致事件を見ても国内で日本人を拉致するのはそれほど困難なことではなさそうだ。1977年の日本赤軍ハイジャック事件のような人質を取って要求を突きつける事件は原発を舞台にいつでも起こりうる。その時、想定外と言わないで済むようにしなくてはならない。

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