日本エネルギー会議

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住民の反応

東日本大震災から5年半後に再び福島県沖で起きたマグニチュード7.4の地震。専門家によれば、この地震も3.11の余震であるとのことだ。その後も余震が続くなど3.11の巨大さがわかる。今回の地震によって福島第二原発のプールの水を循環させているポンプが自動停止し、再起動まで数時間あったため、プールの水の温度がわずかに上昇した。福島県のテレビ局のインタビューを受けた住民の一人は「やはり完全はない」とコメントした。

原発のしくみを知っている関係者からすれば、コメントした住民にこの程度の温度上昇は安全性の観点で十分に余裕があり問題にするようなものではないことを説明するべきだということになる。私もまったく同感だが、テレビのインタビューでは「プールに水を入れるポンプが停止するなどありましたが、これについてどう思うか」という聞き方をするので、住民はすでに問題のないことを理解していたとしても自分が専門家のように「問題はないと思います」とは答えない。もし、そう答えてもそのインタビューは局の判断で放送されない可能性がある。

それとは別に、こうした発言が出やすい背景があることも事実だ。まず、メディアはこの件に関して繰り返し図入りで伝え、温度上昇がごくわずかであったことも伝えたが、それとともに水面の動揺によってポンプが自動停止するようなしくみになっていることや、再稼働まで時間がかかりすぎたという問題をクローズアップした報道ぶりをしたので、住民はその受け売りをした可能性が高い。久しぶりの大きな地震で、どのメディアも福島原発におけるトラブルがあるならばこれを取り上げたいと考えていただろうが、これ以外はモニタリングポストの電源停止くらいしかネタがなかったため、プールの問題だけが切り取られ、より大きく繰り返し伝える結果となった。

プールの水については福島第一原発の事故時に4号機できわどい状況で水温上昇が避けられて事故がそれ以上拡大しなかった話を誰もが知っていて、燃料棒を冷やすことが大事だとの認識を共有している。今回、使用済の燃料棒が大量に入ったプールであったことから、これが溶けだせば大事故にと、短絡して考えてしまうのは風評のおさまりつつあるなかで復興に向かっている一般住民としては無理からぬことだ。ちょっと知識のある人ならば、万一停電が起きたら、あるいはポンプやモーターが故障したら、あるいはブールが損傷して大きな水漏れが発生したらなども頭の中では簡単に付け加えて悪い方向に想像を巡らすことができた。

さらに根本的な問題として、国が原発そのものや事故対応に関してあまりにも安全を強調していることへの反発がある。オリンピックの招致に当たっての安倍首相の「アンダーコントロール」発言以来、国会などで繰り返し答弁される「世界最高水準の安全基準」などに対して福島県民はかなり不満を持っている。これは福島第一原発の事故以前に、国や電力会社の安全性説明を信じてきたが見事に裏切られた経験から、原発に関しては自信満々ではいけない、もっと臆病になるべきと思っているのだ。であるから今回のトラブルは住民にとっては「それみたことか」なのであり、嫌味のひとつも言ってみたいわけだ。

事故後、住民との苦しい対応を繰り返してきた東京電力は、今回も含めて自信満々なことは一切発言せず、常に謙虚な姿勢と慎重な物言いをしている。それは住民の心理状態を間近で見ているため、「そんなに心配したことではない」と言ったとたんに住民の反発を受けることがわかっているからだ。

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