日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

隠したい誘惑

台風の影響による大雨で第一原発の港湾内の2地点でセシウム137の濃度が最高値を更新したにもかかわらず、東京電力は分析結果を知らせるメディアへの一斉メールの本文に「最近の変動から見るとやや高めの傾向」と表記した。メディアからの反応に担当者は、降雨時に放射性物質濃度が上昇する最近の傾向の範囲内で「有意な変動ではないと判断した」と釈明。「有意な変動」とは放射性物質濃度が10倍以上に上昇した場合を指しているとしたが、メディアは納得しなかった。

さらに別の広報担当者が「(高濃度の汚染水が漏えいした)事故直後はもっと高かった」と述べるというおまけまでついた。メディアからすれば「過去最高値」がニュースであり、東京電力の「有意な変動」は技術屋の勝手な言い訳としか映らない。東京電力は翌日になって「もう少し適切な表現があった」と不適切な表現だったことを認めた。地下水位の上昇から汚染水が港湾内に流れ込むのではと、誰もが注目している最中に、このような表現は「飛んで火にいる夏の虫」だ。たちまち非難を浴びせられて当然だろう。甘いとしか言いようがない。

こうした姑息とも言える発表文の表現は、福島第一原発の事故以前には当たり前のように行われていたが、事故後は「嘘さえつかなければ、後で言い訳出来るだろう。そのまま通ればそれに越したことはない。要求もされていない資料や事実はこちらから開陳することはない」は通用しなくなっている。こんなことでは福島第二原発の再稼働はありえない。

「もんじゅ」のつまずきの発端は、隠したい誘惑に負けた動燃のナトリウム漏洩現場を撮影したビデオの隠蔽だった。そのやり方は多少の差はあるものの、どの原発でも採用され、福島第一原発の事故の最中にも数多く見られた。(官房長官の記者会見でもそうであった)そして、今もなお続いているのを見ると何故これほどまでに懲りないのかと驚いてしまう。原発事故で避難している全世帯に送られてくる東京電力からの広報の内容を見ても、「遮水壁は全体的に温度が低下し、壁内外で水位差が拡大する兆候が見え始めています」などと、普段テレビや新聞を読んでいる人を迷わせるような表現をしている。

こんなことをしている裏には社内での二つの抗争があると思われる。一つは技術部門と広報部門の間の争いだ。技術者は技術の常識で考え、自分たちの立場を守ろうとするのに対し、広報部門はメディアや一般の人々がどう思うかということを意識する。技術部門に言わせれば、そのところをうまくやるのが広報部門の務めではないかと考える。

もう一つは本社管理部門と現場の争いだ。本社管理部門からすれば、正直ベースでやれば、そこからどんどん攻め込まれてしまう。なんとかうまくやれないのかと考える。さらに本社ではさらに上層部の指示や暗黙の了解があるのかもしれない。その先は政権や監督官庁の意向につながっている。(福島第一原発の事故の際にも東京電力本社は盛んに官邸の意向を気にした)

こうした社内抗争の結果、多くの場合技術部門や本社の意見が通ってしまうが、結果いつも後で大変な目に遭うのが広報部門や現場だ。もういいかげんに「原子力では逃げてダメ」なことを悟ってはどうか。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康