日本エネルギー会議

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惰性

深夜に放送されたNHKの討論番組「解説スタジアム」で、解説委員7人が「どこに向かう 日本の原子力政策」というタイトルで議論し、日本の原発政策のデタラメと行き詰まりを赤裸々に語ったと評判になっている。その番組の最後に解説委員長が「福島原発事故では、いまだに9万人近い方が避難生活を強いられている。安全神話は完全に否定され、事故を起こすと、いかに手に負えないかを知ることになった」と締めくくっている。

先月始め、福島県は東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所事故による福島県内外への避難者数が9万人を下回り8万人台になったと発表した。役所もメディアもコピペをしているがごとく、何故こうも同じような表現をするのだろうか。惰性でやっているとしか思われない。 

約8万人の多くが帰還困難区域を抱えている浜通りの大熊町、富岡町、浪江町などの住民であるが、そのほとんどが移住し終わっているか、移住をすでに決断した人々なのだ。住民票が元住んでいた自治体にあるからといって、そのまま避難者だと決め付けるのは間違いだ。どの町の住民のアンケート結果を見ても、「帰還しない」が増加し、「帰還する」は少ないままで、「判断できない」が減り続けている。

「いまだに」とか「強いられている」とすることで、被害者の立場を強調し原発事故の被害の大きさを表そうとしているのだろうが、かえって真実味を失わせる結果となっている。「生まれ故郷を去り移住をした人が何人、帰還を希望しながらもついに苦渋の移住決断をし、どこで暮らそうかと模索している人が何人、異郷の地であくまで帰還を待つとした人が何人」としたほうが、原発事故の重大さを伝えられるのではないか。また、広野町など現在までに帰還した人たちが、何年も避難生活をしなければならなかったのも事実である。

チェルノブイリにひっかけて、原発事故の重大さを語ろうとする向きもあるが、バラ撒いた放射能の強さがまったく違う事故でありながら、移住については同じような結果になったことを問題視するべきである。日本で原発事故が二度と起きては困るのだが、福島第一原発の事故における住民の決断と行動は事実として重みがあるのであり、それは今回の区域設定、除染、賠償などが前例となる限り、もしまた事故が起きれば同じようなことが繰り返されることを意味する。

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